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    あらら、エルはたいそうご立腹のようですが、霊災から1年後、壁新聞から始まる騒動はこれにて終わりの模様。それから月日は一気に過ぎていき。ダラガブの騒乱は第7霊災と正式に命名され、そして徐々に町の平穏が戻っていきました。

    そして霊災からもうすぐ3年が経とうとする夏。彼女たちの新たな冒険が始まるようです。



    エーテライトが来ました
    A.E.1570年7月13日 晴れ

    霊災からあと2か月ほどで3年の今日。わが森の都に転機が訪れます。ついに!エーテライトが復活しました!台座の上に、チョコボのソリで運ばれて来た大きなクリスタルを設置して完成。記念式典が執り行われました。

    モードゥナという遠い土地で取れる特殊な鉱石で出来ているそうです。

    大人たちは「これでテレポが使える」と喜んでたけど、子供のわたしにはリンクシェルが使えるようになることの方がうれしい。

    でもちょっと複雑です。エーテライトが整備されたことで各地の復興に一区切りがついたとされ、疎開事業は霊災3年をもって終了、と決定されました。だから、キャプテンとも裁判長とも、もうすぐお別れです。

    LSが復活するんだから、地元に帰った後も、お話できるよね?




    交感
    A.E.1570年7月14日 晴れ

    昨日からエーテライトの広場には行列でいっぱいです。テレポを使うには「交感」という一種の契約作業が必要なのですが、なにせ町中の人が登録しようとしてるので作業の終わりが見えません。

    「予約制にすればいいんですよ。ここの行政は手ぬるいですね。」
    まあ、ウルダハほど人がいないしね、なんて言いながら子どもはのんきに眺めています。大人は商売が絡んでいるのか割と必死。各地のエーテライトめぐりに出かける商団も編成されているらしく、大きなチョコボキャリッジが何台も町の外に並んでいました。

    あ、本来、テレポの必要が無い子供に「交感」は認められないけど、私たち3人はミューヌさんの計らいで、混雑が落ち着いたら登録させてもらえる事になってます。まだ遠くの街には行けないけど、近場の行き来は便利になりそうなので、ちょっと楽しみです。


    【注記】チョコボキャリッジ→地球での馬車に相当します。
    (8)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:29 PM.

  2. #22
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    A.E.1570年7月21日

    「やあ君たち、来たんだね。このところずっと暑いねえ。」

    エーテライト広場で、ミューヌさんがニコニコして立っている。‥‥黒幕の顔だ。エルは臨戦態勢に入る。ミューヌとは、とある縁で警戒すべき大人という認識が刷り込まれてしまったらしい。常時デフコン3。

    「君は僕に対する警戒態勢を解かないねぇ。」
    「冒険宿なんて、職にあふれた労働者を低賃金で危険な業務につかせて、報酬掠め取ってるだけじゃないんですか?」
    「これは人聞きの悪い。冒険者の力量に応じた手ごろな冒険を、ご近所の皆様方のお困り事から選りすぐって差し上げてるだけですよ。」
    「だからその辺が掠め取ってると‥‥。」
    「ま、まあまあ。」
    「よしなよエル、せっかく登録させてくれるんだしさ。」

    対してキャプテンと裁判長の二人はミューヌに対し微妙に低姿勢だ。尊敬なのか畏怖なのかは不明である。この態度には甚だ不満であるが、不満を持つ一番の理由に報道規制がかけられているのでは、二人に強く言うこともできない。

    「まあ‥‥、エーテライトの便宜を図って頂いたことにつきましては、感謝の念を示す事も吝かではありません。謹んで御礼申し上げます。」
    「難しい言葉を、難しい嫌味にくるんで使えるんだね‥‥。いやまあ、どうも。ここのエーテライトは僕の管理だからね、お安い御用さ。」

    元々エーテライトシステムは冒険者ギルドが各国から管理を委託されている。冒険宿のマスターであるミューヌがこの街のエーテライト管理者となるのは当然の成り行きである。

    二人の交感作業は終わり、最後に私の番。手を伸ばし、エーテライトの光を感じ取る。そーいえばこの感覚、過去視の光を探す作業とよく似てるなぁ。




    そして過去視の世界に投げ出される。そこは圧倒的な絶望感に包まれていた。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・


    「どうだった?」

    「‥‥沢山の人が戦ってた。色んな人が‥‥、冒険者のお姉ちゃんも見えた。私は名前を呼んで、手を伸ばしたけど全部すり抜けて‥‥。そのうち赤い星が割れて、中からとても大きな、おおきな‥‥あれが竜?が現れて、みんな。みんな‥‥!吹き飛ばされた‥‥!!」

    頭が痛い。その先を言葉にするのが怖い。その時、二人が私を抱きしめてくれる。キャプテンなんか本気で怒った眼をしてミューヌさんを睨み付けてる。それに気が付いて少し落ち着いた。深呼吸してから続ける。

    「だ、大丈夫‥‥。その時、青白い光が暴れる竜を一時抑え込んで。巨大な魔方陣みたいな。でも抑えきれなくて砕け散った。私の立ってた場所は魔方陣の中心から、かなり離れた場所で、全体の様子を見ることが出来ました。」

    「そうか、やはり12柱での封印には失敗したのか‥‥。」

    「そのあと、魔方陣だった場所の中心から光の柱が立ち上がって行きました。最初は細かったけどドンドン力強い光になって、最後には月に届くような巨大な柱に。‥‥私の位置から見えたのはそこまでです。柱の中心で何が行われていたのかはわかりません。そこで過去視は終わってます。」

    「あんた、分かっててエルに触らせたわね!一体何考え‥‥」
    「まって、私に聞かせて。」

    制止して立ち上がる。

    「私を試したんですか?」
    「その事については弁明しない。確かに僕のしたことは君を試す行為だ。そのエーテライトの原石は戦場のかなり近いところから取れたものだから、感受性の強い君なら何か見えるんじゃないかと期待した。」
    「戦場?いつの戦いですか?」
    「空に、巨大な赤い星が浮かんでいただろう?それはダラガブと言って、霊災を引き起こしたバハムートを封印していた卵だ。過去視の光景は恐らく、霊災当日の戦場。」

    「あれが、森を焼いた‥‥」

    私の知らない破壊の風景。3人それぞれ、思うものは異なる。だけどそれは幼い日のことで、今突きつけられた現実感とは無縁のものだった。あんなものと、お姉ちゃんたちは戦っていたんだ。いつかLSで話してくれた、私の憧れた冒険世界がこれなんだ。

    「僕がずっと気になっていたのは、君の日記に書かれていた『ひかりのはしら』なんだ。あの騒乱の時、そんな巨大なものは一切目撃されていない。過去視能力がある君だけに見ることが出来たと考えるのが妥当だ。」
    「‥‥」
    「今の過去視でも視えていたなら、それは『本物』だと思う。それも封印失敗後に発生したのなら、12柱封印を取り仕切ったルイゾワ氏が使った最後の切り札である可能性が高い。」

    「‥‥あの。ルイゾワさん?らしき人は見えなかったんです。中心からかなり離れた位置だったから。ごめんなさい。」

    「とんでもない!むしろ感謝してるんだよ。とにかく、当時の様子を現場近くで見た記録は全くないんだ。誰も帰らなかった。」

    そこでミューヌさんはしばらく目を閉じる。『帰らなかった』の後に言葉を続けなかったことが、私にはとても重く感じた。

    「だから冒険者ギルド『カーラインカフェ』は、君たちを冒険者と見込んで依頼する。『霊災の日』に何が起こったのか、視て欲しい。ルイゾワ氏が行った行為、冒険者たちの行方‥‥。我々には情報が必要だ。君たちの能力を、貸してほしい。」

    ただ依頼されただけなら、断っただろう。ミューヌさんの依頼なんて絶対受けない。でも、さっきの光景には確かにお姉ちゃんがいた。光の柱が出来る姿を、体で感じてしまった。まぜこぜの感情を一言でいえば多分『冒険心』だろうか?抑えきれない。

    「分かりました、私も知りたいです。協力させてください。何をすればいいですか?」

    「サポートの方は僕たちが全て行うから、君たちは過去視に専念してくれればいい。仕事はもうしばらく先だ。もう夏休みだろう?今はエンジョイしててくれ。」

    と、ミューヌさんは少し意味深にウィンクする。そして。

    「ありがとう。協力に感謝する。」
    と、子供の私たちがビックリするくらい深々と礼をして、エーテライト広場から立ち去りました。
    (8)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:34 PM.

  3. #23
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    しまったああああ~~
    A.E.1570年7月21日 晴れ

    ~~~(ここまでエーテライトでの一件)~~~

    「エルさん、申し訳ありません。」

    ミューヌさんが立ち去った後、唐突に裁判長が謝るので驚いた。なんで?って聞いたら、霊災の過去視の件、裁判長の実家も依頼主の一人なんだって。世界は繋がってるんだなあとは思ったけど、別に裁判長の責任でもないしね。それより‥‥。

    「あんた、ずいぶん安請け合いしたわね。」

    キャプテンがあきれ顔で声をかけてきた。そうです。私は、私が払う「過去視の代償」の事を、すっかり忘れていたのです。過去の出来事ほど、加速度的に代償は大きくなると教えてもらったことがあります。私は計算が出来ないので、恐る恐る代償を聞いたら‥‥。

    「霊災当日を過去視したんなら、3週間くらい?ま、あなたの分も夏休みはエンジョイしてあげるわね。」
    「アサガオの観察日記は僕に任せてください。完璧に仕上げておきます。」

    つまり、この日記を書いて、目をつぶったら次は8月の中旬です。夏休み、半分近く持ってかれた!青春真っ盛りの少女が支払う代償にしては大きすぎるよ!やっぱりあの人、黒幕なんだ!依頼キャンセルしたいよぉ~~。




    まさかの海デビュー
    A.E.1570年8月9日 眩しい

    最初、微妙に漂う香りに違和感を感じました。そして起きたら、割と高級そうな知らない部屋。どうも寝てる間にどこかに拉致された模様です。

    「あ、やっと起きた!海賊の作った海運都市、リムサ・ロミンサへようこそ!」

    はい?

    窓を開けると、そこは絵本の世界でしか見たことが無いオーシャンビュー。吹き付ける潮風、きらめく水。ぎらつく太陽と濃い青が印象的な空。見下ろすと港街、大きな帆を広げる大型帆船がいくつも港に、大海原に見えます。

    「いい部屋っしょ?あたし達、冒険者ギルドと契約中だから、エオルゼア中の冒険宿とチョコボキャリッジが無料なんだよねー。しかもアンタが寝てる間は介護名目で、部屋もチョコボも高級ランク、執事付きのVIP待遇!折角だからこっちに連れてこようと思ってさ。」

    それにしても。

    「焼けてるねえ‥‥」
    「うん、やっぱ海ね!ここがいつか私が支配する世界よ!」
    「えーと、そういうことではなく。」

    まあいいや。なんだかんだ言って私もあちこち街を回って、海で遊んで、自宅にお呼ばれして。起きたばかりだから泳いでないけどね。楽しかった。

    「ところで裁判長は?」
    「アサガオで学術論文作るって張り切ってたから、グリダニアに置いてきた。」

    よく分かりませんが、夏休みの研究課題は任せておくことにしました。




    過去視の限界点
    A.E.1570年8月10日 やっぱり眩しい

    「あ、そうだ。私、リムサまでのエーテライトとは交感してくれたの?」
    「それはだめ。自分でやんなさい。」

    あっさりと否定された。ケチンボだ。

    「えー?」
    「えー、じゃないわよ。あんた自分が眠り姫になった原因忘れてるでしょ。」
    「‥‥あ。」

    つまり、またエーテライトに過去視の光が潜んでたりしたら危ない、ということです。ちゃんと集中して、「エーテライト」と「過去視」を見分けてから触らないと。

    「そうだよー。過去視はちゃんと深さを測ってから。特に、4年がギリギリ限界だからね。それ以上は絶対ダメ。」
    「なんで4年?」
    「4年潜ると、代償が8週間。2か月近い。過去視に人生捧げるつもりは無いよね?」
    「そりゃあ‥‥。」
    「それに、4年を過ぎると、1日遡るごとに代償が一気に膨らむ。5年潜ると、2年くらい眠り姫よ?」
    「ええ!?」
    「だからミューヌさんには『潜るのは4年が限界、あと、眠り姫の期間は年間3か月まで』と言っておいた。本当は1か月だって重いんだけどね。」

    私が寝てる間に、色々と交渉してくれたみたいです。そして最後に、申し訳なさそうに、ごめんね、って言う。私が決めたことなんだから気にしなくていいのに。

    ありがとうね。
    (8)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:37 PM.

  4. #24
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    A.E.1570年9月5日

    時は少し未来の、霊災から丁度3年経ったリムサ・ロミンサ。第7霊災と名付けられた初めての年の慰霊式典は、特に被害が大きかったリムサで行われることになった。各国から来賓が訪れている。

    その中の一人の存在に、緊張感が高まっていた。

    (‥‥くそっ、ここで来たか。)

    リムサ軍令部総長、エインザルは苦虫をかみつぶしている。招かれざる来賓はガレマール帝国軍、第XIV軍団長ガイウス・ヴァン・バエサル。先の霊災では帝国領土にも被害が発生したという名目で、帝国代表として出席していた。

    「先の霊災においては、我が国も独自に防衛艦隊を派遣したが、力及ばず各地に被害が発生した。ここに改めて、犠牲者に対する哀悼の意を表する。」

    「ダラガブ事変は、貴国の将校が引き起こしたのではなくて?わらわの国に幾度も兵を差し向けておいて、いまさら何を申し開くおつもりかしら?」

    真正面に立って凄みを効かせたのは、ウルダハ女王、ナナモ・ウル・ナモだ。気品は申し分ないが、いかんせんララフェルが帝国将校に対峙するには無理がある。

    「ネールの企てが霊災の一因となったことには、帝国としても遺憾である。彼奴の軍団は解体され、ネールについても行方を調べているところであるが、関係者はことごとく行方不明であり、真相の解明には難航している。」

    なおもナナモは強い視線を浴びせたが、どちらも動じる気配はない。グリダニアの代表が間に入り、やっと場が収まった。

    「我が国も皇帝の指示の元、可能な限り防衛に尽力した。リムサ・ロミンサは我が艦隊が近くを航行中だった事もあり、直接指揮を執ったが、辛うじてミズンマスト防衛に成功したとはいえ、我らの力不足で市民に多くの犠牲が出たことを陳謝する。」

    「謝られる筋合いはない!」
    思わず、エインザルが声を上げる。その直後、他国代表から視線を集めたことに強く後悔した。

    「い、いや、国家の防衛は我らの義務だ、ガイウス殿が気に病むことではない。お気遣い、感謝する。」

    「時に、貴国では、提督の選出は何時行うのか?長らく提督が不在で在られるようだが。」
    「!‥‥、それは内政干渉か?」
    「我の純粋な興味にすぎぬ。貴国では『トライデント』という競技で提督が選出されると聞く。開催されるのであれば、ぜひ招待願いたい。」
    「招待‥‥それは、選手としてという事ですかな?」
    「ははは!そこまでの気概のあるものが我が軍にいれば、ぜひ参加させてみたいものだ!だが、我はただ、見たいのだ。トライデントという競技を。」
    「なる、ほど‥‥」
    「それが貴国の行く末になるのであろう?」

    場の参加者はこの会話を、ただ見守った。帝国の思惑を計らなければならない。エオルゼア諸国の中に帝国になびくものが居ないか、見極めなければならない。

    それぞれの思惑が交錯する中、慰霊式典はその後、粛々と執り行われた。クサビは放たれた。エオルゼア諸国の協力関係は保たれるだろうか?
    (8)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:39 PM.

  5. #25
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    ウルダハへ
    A.E.1570年8月18日 蒸し暑い

    リムサを出発して4日間。船とチョコボを乗り継いで、ウルダハに到着。ウルダハのエーテライトを交感して‥‥。

    「さ、グリダニアに帰るわよ。」
    え、観光とかしないの?と思ったんだけど、9月になったらまた来るんだって。テレポ使えばすぐだもんねえ。ちょっと味気ないけど。

    そして。
    今はグリダニアの自室。机の上には、ず~~~っと放置されている夏休みの宿題。え、これ、今からやるの?‥‥嫌ですよ!今日は寝ますよ!




    ウルダハへ(2)
    A.E.1570年9月2日 やっぱり蒸し暑い

    ウルダハリターンズ。裁判長のテレポに便乗して私のアニマは温存。大人がテレポ登録に必死なのがちょっとわかった気がします。これ便利すぎますね。

    今度の過去視は、ルイゾワという偉大な術士の方が残した石を調査することになっています。裁判長は会ったことあるそうです、すごい人だって!今回調査する石も、ルイゾワさんから直接託されたものらしいです。

    これはちょっと特殊で、記録が残ってる本体側は見た目普通のリンクパールですが、ウルダハに残った設備を利用して、9/5に見るように、という指定がありました。

    「増幅装置的なものか、あるいは重要な情報だから勝手に見られないよう、封印のために分離してるのか。そんなところじゃない?」とはキャプテンの見解。

    確かに、石だけを調べても、光らしきものは全然見えないんですよね‥‥。本格的な調査は明日という事になり、後は、ぶらっと観光の一日でした。




    ルイゾワおじいさんの光
    A.E.1570年9月3日 雨

    測定結果は、1566年9月5日。私の過去視限界ギリギリの4年前でした。これを見れば8週間の眠り姫が待っている。

    「‥‥」「‥‥」

    二人とも押し黙ったまま。大丈夫だよ!ちょっと見てくるだけだから。そうは言ってみたんだけど‥‥。私もちょっと怖い。そこのところは隠せてたはずだけど。

    あと、ひかりかたが、これまでと全然違う。太陽みたい。普通は淡い光で、4年分の深さだと探すのも一苦労なんだけど、今回は、石を装置に設置した途端、ものすごい勢いで光りだしてビックリしました。これ、触って変なこと起こらないかなあ。

    まあ、どっちにせよ覚悟を決めて触ってみるしかない。9/5に見ることが決まってるので、今日も観光‥‥に行こうと思ったら。

    「夏休みの宿題残ってるんですよね。手伝いますよ。」

    そーです、昏睡期間があったので提出の猶予は貰ったんですが、こういうの、免除はしてくれないんです。ウルダハまで来て、学校の宿題してるなんて‥‥。



    過去視は霊災の日に行うようですね。
    この日の日記はちょっと長いようなので、一息入れましょう。
    (8)
    Last edited by lucia; 02-12-2013 at 08:49 PM.

  6. #26
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    過去との会話
    A.E.1570年9月5日 4年前は晴れてました

    今日の日記はレポート込なので長いです。

    過去視を行った場所は、霊災前は十二跡調査会という団体が本拠地としていた場所。建物は霊災の破壊から復旧されていますが、組織としての調査会の方々は、行方不明のままです。

    過去視の先には、ルイゾワおじいさんが居ました。本がいっぱいの書斎で、魔法装置の調整をしているようです。どうせ向こうはこっちが見えてないので、後ろから近づいてのぞきこんでみます。

    「こんにちわ‥‥ルイゾワおじいさん、かな。」
    「おや、きたようじゃな。いらっしゃい、お嬢ちゃん。」

    ええええ!?思わず飛びのいて、本の山に手をかける。もちろん現実世界ではないので崩れるようなことはありません。でも、ルイゾワおじいさんはまっすぐこっちを見ている。え、過去の風景だよね???

    「驚かせてしまったようじゃのお。なに、ちょっとした魔法じゃよ。話をしたかったのでな。少し、いいかの?」
    「‥‥はい。」
    「お嬢ちゃんは、いつから来たのかな?」
    「えっと‥‥?年号のことなら、A.E.1570年9月5日、丁度4年後です。」
    「ほう、ここが4年前の世界という事を自覚しておるのか。なかなか優秀なようだ。」
    「いえ、そんな‥‥」

    ルイゾワおじいさんは4年後、私たちの世界の状況を知りたいようでした。出来る限りのことは話しましたが、私には難しいことも多くて。また来るから、質問をどこかにまとめておいてほしいというと、メッセージを封印した魔法装置を準備する、とのこと。その時気が付きましたが、おじいさんの操作していた魔法装置は、過去視を行ったそれです。

    封印解除呪文を教えてもらい、私は元の世界に戻りました。一連の出来事を説明する。みんな、驚いたり考え込んだり。

    「‥‥で?ルイゾワ爺さんから状況は聞き出したの?」
    「あ!?」

    ああーっ!こっちの情報話すばっかりで聞いてなかった!平謝りしながら、魔法装置に呪文を唱える。ルイゾワおじいさんの肉声メッセージ。ほっ、ちゃんと状況の説明もしてくれてる‥‥。1年後と思われる危機的な状況、対策の現状、未来の状況の予測と私たちへの質問。

    かなり詳細で、私はちょっと追い切れませんでしたが、キャプテンと裁判長がメモをしてたので大丈夫でしょう。あんまりサボってるとキャプテンに怒られるので取れるだけのメモはしたけど。

    次の過去視の日時も指定されていました。3か月後、また潜ってほしいとのことです。少し間が空いてるのは、私の負担をルイゾワさんも気づかっているんじゃないか、とは裁判長。でも、今過去視ができるのは私だけみたいですし、頑張るしかない、です。

    ではおやすみなさい。みんな、健康には気を付けて。
    (8)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:43 PM.

  7. #27
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    「‥‥今日は何日かなあ。」

    目覚めてから最初に考えたのは、何日寝てたのかって事。寝る前の日付は9/5で、眠り姫は8週間の予想だったから‥‥、えーと10月末か11月初旬ってとこか。ふむ。

    ぽふん。枕を持った両手の勢いを借りて、前かがみに背を上げる。部屋と窓の風景を見て、とりあえず場所が変わっていないことを確認した。サプライズが無いことにホッとしたり少し残念だったりしながらベットから出る。ここで違和感に気が付いた。

    (あれ‥‥立ちくらみしない?)

    それなりのサポートはしてもらえるけど、それでも長期間の眠り姫生活は体力を相当奪う。ベットから身を起こすだけで目の前が真っ暗になる事もあった。その感覚がまったくない。単なる目覚めのいい朝だ。ん~?

    リンクシェルに残った最新の過去視の光は、私が日記を書いてる姿だった。その位置を見て確信する。今日は9/6、つまり普通に翌日だ。あれ?代償無し?疑問符でいっぱいになっていたらノックの音。あわててベットに潜り込んだ。

    「エルさん、おはようございます。おやすみですか?」

    起きてます、とは言えず寝たふり。裁判長がブレックファーストを運んできました。そうだ、このまま今日1日、眠たふりをしてお姫様気分を堪能しちゃえ。私はそんなことを考えたわけだ。よせばいいのに。



    ■朝ごはん
    (‥‥これ、起きていいの?食べさせてもらうの待つの?)

    いきなり難題。あれ、自我が薄いってどんな状態なわけ?聞きかじりの知識しかない。せめて前回の眠り姫を過去視で予習しておくべきだったと後悔しても後の祭り。心臓バックバクです。せめて動悸が収まってからじゃないと演技もできない。

    しかも裁判長出ていかない。仕方なく、なんとなく無気力な感じで体を起こしてみました。

    「ああ、おはようございます。朝ごはんありますよ。」

    (生返事は出来るんだよね‥‥。いや、ここはあえて呼びかけは無視して食事に直行か?)

    迷い一瞬、事故一生。スプーンを取ろうとして落としてしまう。拾いに‥‥行ったらだめー!寸前で手を止める。あ、急制動過ぎたかな‥‥。

    「今朝はシリアルにしてみました。僕は牛乳に浸して柔らかい感じが好きですが、エルさんはどんなのが好みですか?」

    そんなこと言いながら、すっとスプーンを拾い上げ、別のスプーンを取り出してベットの脇に腰掛ける。そしてお皿を手に取って‥‥、え、近いんですけど。

    「さあ、どうぞ、お姫様。」

    そのあとはあんまり記憶になく。口を動かすことに集中してろくに味も感じない。全部食べて、部屋に一人になって、やっと人心地。裁判長って男子なんだ‥‥。わ、ちょっと意識しちゃったぞ。キャプテンとくっつくんじゃないかと思ってたし、あんまり異性って考えてなかったんだよね。

    (‥‥でも、お姫様って言われるの、悪くない。)

    やっぱり女の子の憧れですからー。もうちょっと我がまま言えたら良かったんだけど。眠り姫だしね、仕方ないか。



    ■トイレ
    そして大ピンチ。

    (トイレの場所を知らない!)

    裁判長の実家だけど、この部屋の周辺に何があるのか把握してなかった。仕方ないので、無気力な感じで外に出る。無気力な感じにさまよってみる。

    15分経過。

    (わあ‥‥わあ‥‥どうするのこれ‥‥)

    泣きそう。

    「あら、どーしましたかお姫様。」

    キャプテンが通りかかった。うな‥‥ずかない。自我が薄い、私は自我が薄い‥‥、え、これでどうやって伝えるの?目をまじまじと見つめられたあと。

    「ま、徘徊してるのはたいていトイレなのよね、きて、こっちよ。」

    そのあとは何とか。トイレの扉に鍵をかけられないのがちょっと落ち着かないけど‥‥。ふう~~~。多分これ、また連れ帰ってもらうまでジッとしてれば良いのよね。

    廊下に出たら車いすが用意されてた。あれ、どこにいくの?



    ■ウルダハ・ランディング
    「ここからの景色はお勧めですよ。これ以上となると王宮に上がらない限り見ることはできません。」

    と裁判長が話しかけてくる。

    ウルダハは確か、一度壊滅的な破壊を受けたって聞いてる。それなのに、3年経って、もうほとんど元通りになっているんだね。昨日見た過去視映像と建物の雰囲気が全然変わってないので、霊災なんて無かったんじゃないかと思うほど。

    「市街地はほぼ元通りになったんですが、外の風景はだいぶ変わりましたね。一番の違いは鉄道が引かれたことでしょうか。」

    霊災前より進歩してるし。‥‥でも、素直にきれい。光を反射しながら、飛空艇が乗り込んできた。いつか乗りたいなあ。

    「いつでも案内しますよ、姫。」

    目線おっちゃったのばれたかな?ちょっとヒヤッとしながら視線を前に戻す。多分ずっと、私がこんなだった時も、何とかして私の心をくみ取ろうと、話しかけてくれたんだろうな。返事を返すことができないのが、もどかしい。



    ■お勉強
    勉強なんてどうやるのかって?私も疑問でしたよ。起きた後、学校ついていけてる‥‥というかむしろ直後のテスト、凄く良かったもの。

    睡眠学習でした。ガチです。
    国語と社会・歴史担当が裁判長、算数理科・地理はキャプテンの担当。

    ワンポイントレッスン!
    意識があるときに睡眠学習を受けると、すぐ寝ることができます。こういう場合効果あるの?



    ■お風呂
    なんていうんでしょうか、これは‥‥、もっと雑に扱われてると思ったんだけど。まさにお姫様扱いというか‥‥。自主的に動かないので侍女もついて湯船に入れてもらったり、全身洗ってもらったり。キャプテンが結構頑張ってるのにビックリです。



    ■晩御飯
    ほっておいても枕元に食事があれば食べてる、って聞いてたので、正直もっと、ほっとかれてると思ってたんだよね。でも、ここまでの食事は全部、誰かが付いてくれてた。今もわざわざテーブルまで連れてきてくれてる。

    二人とも私に話しかけてくれたり、さりげなく食事を運んでくれたり。あと喧嘩とかしてたりして。やっぱり私を間に挟んでやりあうのよね!あーもううるさい!私の仲裁をあてにするな!

    なんて、言えないんだよ。私はアニマを失ってて、回復するまでは何を思っても伝えられない。怒れない、悲しめない、喜べない。寝たり食べたり、生理欲求を何とかする程度。

    あーでも、今日のスープ美味しいなあ。
    パンもパリッと焼けてるなあ。美味しいね、って言いたいなあ。
    やだ、涙出てきた。拭ったりしたら、ばれるよね。もう一口。スープを口に入れる。美味しいなあ。

    「‥‥ったく(パコッ)」
    「てっ!?」

    キャプテンに小突かれ、声が出ちゃった。あ、確実にばれた。

    「昨日の過去視、代償はルイゾワ爺さんの先払いだったんでしょうよ。」
    「ああ、なるほど。色々ありえない状況でしたしね、そのくらいの仕込みはありそうだ。」

    眠り姫って言われて、悪い気しなかったの。朝ごはん、シリアルは堅めの方がよかったなあ。トイレは最初に教えておいてください、泣くかと思った。ウルダハの復興は凄いね。飛行艇もいいけど、鉄道に乗ってみたいな。えっと、歴史の授業ほとんど覚えてないの、もう1回教えて‥‥。それとキャプテン!シャンプー目に染みるよ!もうちょっと配慮して!喧嘩も私を挟んでやらないで!

    「‥‥なにっ、何も、ひっ、言えない、の。伝えられない、って、こういう事?みんないるのに、私もいる、のに。居ない。ここにはいない。何、何も、伝えられないんじゃ、ひくっ、いないって事?でも、居るのに。私、眠り姫って、こんなにつらいの?私は、私は、こんなにつらい思いしていたの?」

    泣きながら、それでもなんとなくスープを口に運んでいた。美味しいね、美味しいね。どこかの料理評論家みたいな気のきいたセリフなんて出ない。それでも、言葉を止めたくなかった。心を伝えるって本能的な欲求なのかなあ。

    キャプテンが頭をなでてくれた。

    「まあ、自覚できたんならいいわよ。あんたいつか、取り返しのつかない代償払う事になりそうだったからね。」

    「スープもおいしいですが、こちらの魚もおすすめですよ。」

    裁判長は食事をお皿に取ってくれた。

    何事もなかったように食事は再開されて。やっぱり私はお姫様のように、ちょっとチヤホヤされました。‥‥でも、眠り姫はもうこりごり。



    ■就寝前に
    ‥‥なんで続いてるの?二人に車いすで運ばれてる私。あの、歩けるよ?
    そのままベットに寝かされる。

    「さあ、眠り姫。夜の学習のお時間ですよ。」

    はい?

    「歴史の授業をご所望とのことでしたので。さあ、今日は中世ウルダハの庶民文化についておさらいしましょう。」

    ゆっくりとお風呂を堪能して。
    食事でおなか一杯になったところに。
    暖かいベットに寝かされて。
    囁くような歴史の授業を受けたら。


    寝ますよね。

    「こら寝るな(パコッ)」
    「てっ!?」

    寝ることのできない睡眠学習の夜が更けていく。何この拷問。やだ、た、助けて!
    (9)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 08:48 PM.

  8. #28
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    2回目のルイゾワさん
    A.E.1570年12月5日 寒いね

    久々のウルダハです。9月で疎開事業が終わったので、みんなそれぞれの国に戻ってます。でもエーテライト便利すぎ。LSで会話できるし、アニマを消費するとしても会おうと思えばすぐだし。ただ、3人が一度に揃うのは3か月ぶりでした。

    「さて、爺さんに伝える内容はちゃんと暗記してきた?」
    「う‥‥。」

    再開の余韻など浸らせてくれず、まずは伝える内容の確認。ノートも持っていけないので、私が覚えるしかないので‥‥。二人の鬼チェックが終わった後、やっと過去視の時間になりました。絶対こっちの方がアニマ消費してる。

    そして4年前の世界。これまでの過去視はただ再生するだけですが、これはもはや、実際に4年前に降り立ってる。当たり前のようにルイゾワさんと会話してるけど、そんなのあり得ない。おじいさんは未来から情報を得ているのです。どれだけのアニマの代償が必要なのか、想像すらできません。

    相変わらず緊張しながら、私は何とか、覚えたことを話しました。‥‥なんだかルイゾワおじいさんはニコニコしてます。変なこと言ったかな?ちょっと不安になって聞いてみる。

    「わしが一番うれしいのは、お嬢ちゃんが4年後の世界から来たという事なんじゃよ。」
    「私が?」
    「わしの力はちっぽけなものじゃが、それでも、4年後を守れた。守れる未来がある。苦労が報われることがやる前にわかるというのは、楽しいもんじゃのお。」
    「それって、相当ズルっこだよ、多分。」
    「わはは、言われてしもうた。そうじゃなあ、ズルじゃな!」

    二人で笑う。でも、時間は限られていて。おじいさんの導きで会えるのはこれで最後だそうです。多分、私が代償を払えば会うことはできるんだと思うけど、無理をしてはいけないと諌められました。

    これが今回の過去視。一通りみんなに報告して、今後のことは明日話し合うことになりました。そういえば、私も明日参加できるんだね。アニマを失えば、明日を失うことになるんだよね‥‥。明日があるって普通に思ってたけど、ルイゾワおじいさんは、明日ってどんな日に感じてたんだろう。




    行きたい場所
    A.E.1570年12月6日 我がまま天気

    二人と喧嘩しちゃった。

    どうしても、霊災の日のルイゾワさんに会いたい。自分で我儘だとわかってて、それでも強硬に主張した。それで、怒らせちゃった。あの二人相手に理屈で言い負かすことなんてできないから、ただ我儘に言い続けるしかなかった。

    二人が怒る理由もはっきりしてて。多分、とても危ないんだ。まず現場に行く必要がある。そこは大人でさえ近づくのは容易じゃない。ましてや子供の私たちがいくには、それなりに街道が整備されるのを待つ必要がある。計画は進んでるけど、まだ半年以上先になりそうです。

    そして過去視の期間。現場に到着できる時期を考えると4年を覚悟しなくちゃいけない。単純に私にかかる負担が大きい。過去視後はアニマがマイナスでテレポに同乗するのも危険だし、寝てる状態の私を連れて帰る必要がある。

    私が危険で、周りにかける迷惑も大きい。二人が反対する理由としては十分だ。そのうえで、私は最後の手段を使っちゃった。ミューヌさんに直談判した。真実を知りたくないかと。

    まあ、そんな感じで、もう二人は取り付く島もない。もう手伝ってくれないかもしれないなぁ。今、グリダニアの自室に戻ってます。もう、泣けてくるなあ。あはは。




    一緒に
    A.E.1570年12月20日 星が綺麗だったよ

    私の誕生日。二人が私のところに来た。

    来てくれるって。
    今日はこれだけしか書けないや。
    (7)
    Last edited by lucia; 02-05-2013 at 08:53 PM.

  9. #29
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    「ごめん‥‥、ちょっと、強がる役、交代してもらえるかな。」
    「‥‥こーいうときは、私くらいおバカなくらいが良い?」
    「ははっ、そこまで言ってないわよ。」

    キャプテンが珍しく弱気。確かに、ちょっと最悪の状況。私は精いっぱいの苦笑いで、彼女を見下ろしてる。この状況になるまでには、数刻を遡る必要があります。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    A.E.1571年8月22日 お昼過ぎ

    「ノコギリ峠が通れない?」
    「どうも、土砂崩れがあったらしい。旧ブルーフォグ側から回り込むことになりそうだな。」
    「だが、ブルーフォグ側は地脈が乱れてて‥‥」

    ここはナナワ銀山を超えて、北ザナラーンに入ったところ。私たちは第7霊災の決戦の場所、カルテノー平原へ向かっています。冒険者ギルドの手配でキャラバンが組まれ、ウルダハからここまでずっと、荷台の中で揺られてました。

    今日で5日目。まだ半分も進んでないみたいだけど、私たちは完璧に暇で暇で暇でした。ちなみに裁判長は乗り物酔いで死んでます。

    さて、どうもトラブルがあったようで、キャラバンは一時停車中。ふと見ると、キャプテンが一羽の若いチョコボに話しかけてる。慣らし中とかでキャラバンに同行させてる子が居て、キャラバン隊長のチョコボの後ろにずっとくっついてるんだよね。

    「君もさ、そろそろ親離れしないとだめだぞー。」
    「クエー‥‥。」
    「あと、隊長チョコボ君。甘やかしたいのはわかるけど、いつまでも手元に置いとけるわけじゃないんだから。ちゃんと突き放さないと。」
    「‥‥クエックエェ。」

    この人たち、喋ってるんですけど。

    「冗談よ。」「クエッ。」「クエッ。」
    一糸乱れる連携で会話していたことを否定される。うん、偶然だ。そう思うことにします。

    「お、話し相手になってくれてるのか。」
    「こんちわー。この子、乗っていい?」

    そこにキャラバンの隊長が戻ってきた。キャプテンに裁判長に隊長に書記長に‥‥そろそろややこしいなぁ。

    「別料金だがいいか?」
    「うわ、ケチな大人がいる!」
    隊長もなかなか面白い人でした。

    相談が終わって、やっと出発進行!キャプテンはチョコボ君の手綱を引いてて、私も暇つぶしに歩いてます。坂を上り切り、少し開けた平地。砂地っぽい場所に、ノンアクのサボテンダーがウロウロしてた。1匹が近くにいる。

    ‥‥ちょっと!チョコボ君がちょっかいだした!

    「いだだだだだ!!!!」「クエエエーーーーーーッッッ!!」

    巻き込まれたのは私・キャプテン・チョコボ君・キャリッジを引いてる大人チョコボ2羽・御者の6人(羽?)。

    「いた、ちょっと、止まりなさい!いたた!」
    「わ、わ、わ!」
    子供二人の制止も虚しく、大混乱のチョコボ君は砂地に足を踏み入れ‥‥。

    「え!?」
    あろうことか、二人と1羽は、流砂の罠に、一気に飲み込まれたのです。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    「あんたまで来ることなかったのよ。」
    「‥‥ごめん。」
    「この隊の目的は、あ ん た を連れていくことなのよ、分ってる?」
    「‥‥ごめん。」

    私たちは砂の洞窟の中。落ちてきたはずの穴が見当たらない。しかも面倒なことに‥‥。

    「だめだ、LS使えない。地脈が乱れてるって言ってたなあ、そういえば‥‥。」
    「乱れてると使えないの?」
    「そりゃそうよ、都市間通信網は地脈を利用してるんだから、地脈が使えなければただの石。最悪、リタイヤしてデジョンする手も考えたけど、それもだめかあ。」
    「どっちにせよデジョンもだめだよ。ここまで5日かかってるし。」
    「そ。引き返して戻ってたら霊災の日が過ぎちゃう。何とかして出るしかないって事。‥‥で、その子は大丈夫?」
    「うん、ケアルガで回復したよ。良かったね~。」
    「クエッ」

    混乱の原因を作った子は呑気なもので。キャプテンはチョコボ君を呆れ顔で見ながら、

    「チョコボ君。まだあんたは運が良かったんだからね。」
    「どういうこと?」
    「この子がひとりで落ちてたら、見捨てられてる。」
    「!そ、そんなことは‥‥。」
    「それが大人の判断。」
    「クエ‥‥。」

    言い返せない。

    「でもさ、私たちは子供だ。我がまま通すわよ。みんなでここを出る!」
    「!うんっ。」「クエッ!」

    気合を入れなおした。がんばろう!

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    「あれか‥‥、LSを見つけました!」

    僕は荷台で瞑想していた。手には探査石。過去視の測定機材を持ち出して、本来の目的で使う。地下に飲み込まれた彼女たちのLSを探したのだ。幻術か呪術の素養があれば使うことが可能である。

    「よし、向こうも気づいた。隊長!状況のやり取りをしたいので、地理に詳しい人こちらに回してもらえませんか?」

    探査石を手旗のように振って、向こうのLS(多分キャプテン)の手旗とやり取りした。幸い怪我はないようだが、状況は良くない。

    ・今いる場所の近くに、カッターズクライという迷宮がある。
    ・落ちたのはその支流である可能性が高い。
    ・流砂は一方通行で、出るならカッターズクライの出口を目指すしかない。
    ・捜索隊を編成中。到着にはしばらくかかる。
    ・すぐ危険が無いようなら動かないように。

    「とはいえ、ずっと動かないわけにはいかないだろう。」
    「流砂は捕食のための罠ですからね‥‥。」
    と隊長たちが話していたが、案の定‥‥。

    「まずい、動き出したようです!」
    「分った、君は瞑想を維持して、光を追い続けろ!隊は迷宮の入り口を目指す!」
    「分りました!」
    チョコボに鞭が入る。急げ!隊は一路、流砂迷宮へ向かった。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    一方そのころ私たち。
    突然現れた敵から逃れるため、二人を乗せたチョコボ君は必死の疾走です。

    「わあああああっっ!?」

    キャプテンは槍、私は今は幻術。二人とも杖代わりに持ってた武器。弓は残念ながら荷台の中です。

    「左、弾いて!」
    「っ!ウォーター!」「ギエッ!?」

    接触しそうな敵を幻術や槍でけん制しつつ、でたらめに迷宮を駆け巡ってる。

    「捕まったら終わりよ!根性!」
    「キャプテン!これどこに向かってるの!?」
    「チョコボ君に聞いて!‥‥いや、そこは右!」
    「クエッッ!!」

    キャプテンの手綱さばきで、チョコボ君は右に進路を取る。

    「道分るの???」
    「今、裁判長と確認中!!」

    やっぱり二人は凄い。この状況で探査石の手旗信号だけで会話を維持できてる。

    「って前に大穴だよ!」
    「飛べえええええええ!!」
    「クエエエーーーーッッ!!」

    チョコボ君渾身のジャンプ!短い羽を巧みに利用し、その姿は大空を自在に駆け巡ったといわれる竜騎士のごとく‥‥2秒ほどですが、素晴らしい滑空で何とか超えてそのまま奥に。追手は穴を超えられないようで、そのまま見えない位置まで移動して難を逃れました。

    けど。

    「あー、流石に裁判長、振り切っちゃったか。」
    「そっか‥‥、しばらく連絡とれないね。こっちの位置も見失ってるだろうなあ。」
    「だから鍛えとけって言ったのにさ。」
    「瞑想に体力関係あるの?」
    二人、目を合わせてくすっと笑った。こっから正念場です。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    そして冒頭に戻る。私たちは、あまり良く無いルートを選んじゃったみたい。少し進むと広場があった。明らかに他を圧倒するような巨大なアリに、多数の働きアリが群がってたので、通路に引っ込んだのだけれど‥‥。

    「後ろ、何か来てるね。」

    敵が大穴を飛び越えたのか、穴が埋まったのか。キャプテンは地面に耳をつけて音を探ってる。まだ遠いけど、ここまで一本道のはず。後ろに下がることもできなくなりました。私は少し体を乗り出して、前方の広間の様子を確認してます。

    「ごめん‥‥、ちょっと、強がる役、交代してもらえるかな。」
    「‥‥こーいうときは、私くらいおバカなくらいが良い?」
    「ははっ、そこまで言ってないわよ。‥‥まあ少なくとも、広場はまずいわね。狭い方がまだまし。」
    「どうするの?」
    「後ろを奇襲しよう。私が距離を測るから、10mまで接近したら飛びかかる。いいね?」

    目だけで合図して、私たちは臨戦態勢を取りました。前衛はキャプテンとチョコボ君、後衛は私。最後の曲がり角から10m離れて、暗闇に潜む。

    「50m‥‥30‥‥15‥‥」「クエッ‥‥」

    (光?)
    その時、キャプテンのLSから伸びるものに気が付きました。水平?その先には通路‥‥。

    「10!!」
    「クエエエエエ!!!」
    「す、ストップーー!!!」
    「うわあああ!?」

    間一髪セーフ!
    ‥‥ではなく、約1名、チョコボキックに顔が地面に埋まってる。

    「‥‥オーバーキル?」
    「ブハッ!死んでません!ゲホッ!」
    あ、裁判長だ。砂地にハマっただけだった。

    ともかく、私たちは何とか無事に、捜索隊と合流したのでした。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    そこから凄かった。流砂迷宮は最後までいかないと出口が無いらしく、私たちは本気の冒険者のすごさに圧倒されっぱなし。捜索隊は大人12名編成、私たちの護衛に4名ついて、本隊はばっさばっさと敵をなぎ倒して‥‥。気が付いたらボスまで倒して外に出てました。

    「別にボスのキマイラ倒さなくても、普通に出ればよかったよね?」
    「迷宮に入ればボスを倒す!これが冒険者のロマンなのよ!」
    「炉辺の石のように、ついでで倒されるボスが哀れだ‥‥。」
    「同感です。」

    不可抗力ということで、おとがめはなかったけど、移動中に荷台から出ることを禁止されちゃいました。キャプテンは窓から身を乗り出して、チョコボ君と何やら雑談中。そこに隊長が乗ったチョコボが近づいてきました。

    「やあ、助かったよ。コイツを失うところだった。」
    「大人はすぐに諦めるからね~。」
    「まったくだ。ただ、我々の任務は君たちを届ける事。済まないが到着まで、おとなしくしててくれ。」
    「はーいはい、分かってるわよ。」
    「クエッ!」

    騒動を起こしたチョコボ君の一声。キャプテンと隊長は目を合わせ、
    「コイツも乗せて貰えるか?」
    「冗談!場所が無いわよ!」

    隊は進む。目的地はまだ、峠をいくつか超えた先‥‥。
    (7)
    Last edited by lucia; 02-05-2013 at 08:55 PM.

  10. #30
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    敷き詰められた思い
    A.E.1571年9月2日

    私たちは今日、決戦の地にたどりつきました。ここは昔、ブリトルバークと呼ばれた前線基地だったそうですが、今はただ、見晴らす限りの荒野となっています。大人たちがキャンプの設営に追われている中、私はその荒野を眺めていました。

    「どんなふうに見えるのですか?」と裁判長が横から声をかけてきた。

    「過去視で見たときは月に届くような一本の巨大な柱だったんだ。でもここから見ると、細い柱が沢山ある。近くで見るとこうなってるんだね。あと、下にばっかり伸びてて、上の方はタケノコみたいに顔だしてる感じかなあ。」
    「このあたり一帯は、エーテライトやLSに使われる高品質なクリスタルが取れます。だからアニマの光が石に刻みこまれたんでしょう。」
    「‥‥こうやって見てるとね。光の柱の根本に、色んな色の小さな光が比べ物にならないくらい沢山、本当にたくさんヒカリゴケみたいに敷き詰められてるのが分かるんだ。柱になってるのは、ほんの一部なんだよ。」

    「視たらダメだからね?」
    そこにキャプテンが顔を出して忠告。分かってるよー。

    「それだけ、ここで沢山の人の思いがぶつかったって事よね。もうすぐ4年かあ。下は4年分だとして、上はどのくらい?」
    「キャプテンじゃないんだから、ちゃんと測定しないと答えられないよ。」

    私は苦笑い。キャプテンはあっそう、と口に笑みを浮かべてから、さりげなく休憩しようとしていた裁判長を引っ張っていきました。あら可哀そう。

    私の仕事は明日からなので、今日はのんびり。出来上がったキャンプはとても本格的で、お風呂まで設営されててビックリ。気持ちよかったー。あとは、日記をつけておやすみなさいです。




    お守りの石
    A.E.1571年9月4日

    明日は霊災があった日。私は昨日から、現場に散らばる光を宿した石を調べていました。絶対見つける必要があるのは、ルイゾワさんの光を宿した石ですが、これはすぐ見つかりました。柱が伸びてない、他に比べて極端に強く輝く光だったからです。

    あと、個人的に一番大事な、お姉ちゃんの光を宿した石。沢山の光の中から、お姉ちゃんのリンクパールの光と似たものを探します。でこぼこの荒野の中、一人で探すのはとても大変でしたが、いくつか候補を拾い上げ、最後にキャンプに持ち帰って、まったく同じ色を宿す一つの石を特定しました。

    光の柱だったときは泣きそうになりました。途切れてない。何の確証もないけど、光柱を残している人には未来がある。そう感じてたから。

    すぐにでも会いたかったけど、これを視たら本来の目的を果たせなくなります。私はこの石をお守りとして持ち帰ることにしました。

    会いたいよ。お話ししたいよ。
    (7)
    Last edited by lucia; 02-05-2013 at 08:58 PM.

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