プロデューサ/ディレクタの吉田です。
パッチ1.20のパッチノートにありました「魔法詠唱を移動によるキャンセルする仕様」について、
実装を検討しているその理由について、ポストさせて頂きます。
新生に向けたバトルの中の「魔法使い系クラス」の役割と特徴、
そしてPvP(対人戦)にも絡む内容のため、過去最長の投稿となってしまいました。ご了承ください
なお、MMORPGとしては、非常にオーソドックスなことを書いていますので、
MMORPGのプレイ経験が長い方には、ちょっと退屈な内容かもしれません……。
なお、この仕様は実装を検討/テスト中の項目であり、特に詠唱キャンセルと、
再詠唱開始のレスポンス次第では、新生まで実装を見送る可能性もありますので、
その点について、事前にご了承ください。
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■パーティ内での魔法使いの役割とイメージ■(主に黒魔道士)
本当に基本的なことになりますが、まずはFFXIVにおいての「魔法を主に使うクラス」のイメージは、
以下のように考えています。
・全クラス随一の防御力の低さ
・全クラス随一の単位時間当たりのダメージ量の多さ(DPSが高い)
・短い時間で集中的にダメージを出せ、ゴリ押しも可能だがMPの燃費は悪い
・眠り/麻痺/足止め/魅了/移動速度低下などの「状態異常魔法」(クラウドスペル)を持つ
つまり、詠唱さえできてしまえば、MPが尽きない限り最大の破壊力を持つ。
しかし、敵に近寄られてしまうと、詠唱を妨害され、あっという間にHPが尽きてしまうという、
非常に偏ったクラスという定義をしています。
もちろん上記はその最も極端な例となる「黒魔道士」をイメージして書いたもので、
今後も追加を予定している、魔法を使う他のクラスで、それぞれ特徴は微妙に異なります。
MMORPGの中でそうであるように、FFXIVでも「魔法使い」は花形クラスであって欲しいと考えています。
モンスターと十分な距離を保ち、強力な魔法を連発すれば、レジスト(魔法抵抗)されない限り、
気持ちよくモンスターを倒せます。
しかし、調子に乗るとMPは枯渇し、うっかり距離計算を間違えば敵に近寄られ、
気が付いたら一瞬で死んでしまう、扱い方が難しいクラスでもあります。
余談ですが、吉田個人の長いMMORPGプレイ歴で、一番長くプレイしてきたクラスでもあります。
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■状態異常魔法と瞬間発動魔法■
魔法使いクラスには、それぞれのクラスに「状態異常魔法」を割り振ります。
眠り、麻痺、足止め、魅了、移動速度低下などなど、基本的なものから、
相手の魔法抵抗力やステータスを低下させる魔法(Debuff系)を持つことになります。
(新生時には現存するクラスにも、多くのスペルが追加される予定です)
これらMMORPGでは「クラウドコントロールスペル」や「デバフ」と呼ばれる魔法を駆使し、
魔法使いクラス最大の欠点である
「敵を近寄らせないこと」
をダメージを出す魔法と組み合わせて、
「敵に接近される前に敵を倒す」
のが、魔法使いをプレイする上での基本スタンスになります。
さらに、近寄られてしまった時の緊急対応として「瞬間発動魔法」(インスタントキャストスペル)が、
割り当てられることになります。この系統の魔法は、詠唱時間が無く、リキャストタイマーが
働いていなければ、ターゲットをして即座に発動することができます(ノンターゲット範囲魔法もありますが)。
ただし、この瞬間発動魔法は、詠唱時間が存在しない代わりに、攻撃魔法の場合は「ダメージが低い」、
状態異常魔法の場合「効果時間が短い」、また「レジストされやすい」「リキャスト時間が長い」などで、
バランスを調整されます。
ダメージ系の魔法だけでなく、こうした複数の魔法を使い分け、
状況に応じて、最大火力を叩きだすのが、魔法使い、というわけです。
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■ソロプレイ時の魔法使いイメージ■
簡単に書くと以下のような流れです。
①最大ダメージの魔法を最大距離(レンジ)から詠唱して敵を攻撃
②モンスターに敵視が働き、モンスターはこちらに攻撃しようと移動開始
③スリプルを唱えて敵を眠らせる(ヘビィ効果を入れて移動速度を低下させてもOK)
④敵の移動力が低下、もしくは停止している間に再び最大レンジへ移動
⑤距離が空いたら振り向いて最大ダメージを出すためのコンボを見据えて攻撃魔法を撃つ
⑥ダメージを受けてスリプルが解け、敵の移動が再開される(が、既にHPは半減している)
⑦コンボとなる攻撃魔法をどんどん唱えて敵のHPをそぎ落とす
⑧最後にMPを回復するための魔法を打ち込んで敵を倒す
敵の残りHPとこちらのダメージ量を把握しておき「完封」するのが魔法使いのソロプレイ。
最後にMP回復効果を持つ魔法を使えるよう、ダメージを調整しておけば、
敵を倒すと同時にMPを回復し、停滞があまりなく、次の敵へアタックできる、というわけです。
(ジリジリといずれは枯渇していきますが、バランスのさじ加減ですね)
ただし、これはあくまで敵(モンスター)が、遠距離攻撃を持っていない場合の基本です。
パッチ1.20で多くのモンスターに無秩序に設定されていた「遠距離攻撃」を取り除いたのは、
この基本となるプレイが可能になるように、という配慮からです。
(逆説的に、アクションの見直しや、遠距離攻撃排除を行わないと、
イメージする魔法使いに到達できないため、パッチ1.20まで順次改修を行ってきたことになります)
パッチ1.20以降、明らかに魔法を使ってきそうなモンスターなど、遠距離攻撃をしてくる
敵に対して、魔法使いは慎重に対処しなければいけません。
魔法使いも攻撃を受けると、魔法詠唱がインタラプトされ、攻撃できなくなるからです。
(この辺りの「詠唱妨害」の調整は随時行います)
そして、この状況で「魔法を詠唱しながら移動可能な魔法使い」が存続し続けた場合、
完全にバランスを壊してしまうことになる……それが今後予定している
「魔法詠唱中に移動を行うと、詠唱がキャンセルされるようになる」という修正の理由その1です。
(モンスターから距離を空けるのが、簡単すぎる上、状態異常魔法を持っていると、
更にそれがお手軽になってしまうからです)
移動=即時詠唱中断、という意図もここにあります(サーバ座標が更新されたら詠唱停止)。
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■パーティプレイ時の魔法使いイメージ■
基本は「敵を近づけさせない」で、というソロプレイと変わりませんが、その行動の根幹に
「敵視を稼ぎすぎない」という制約が加わります。
魔法使いはダメージを出すことにおいて、他のクラスより特に高性能です。
調子に乗って強大な魔法を連発していると、あっという間に敵視を稼いでしまい、
モンスターにターゲットされ、剣術士やナイトが護ってくれる間もなく、倒されてしまいます。
パーティプレイの場合、ソロプレイと違い、常に自分たちのレベルよりも格上か、
もしくは、多くのモンスターを相手にすることになります。
防御力に難のある魔法使いですから、格上の相手や、複数のモンスターに一斉攻撃されると、
白魔道士がケアルを唱える間もなく、死んでしまうでしょう。
ですので、敵視に注意を払い、複数のモンスターに状態異常を与え、
チーム全体の行動把握をしながら、最後は自らのダメージで敵に致命傷を与えます。
特にダンジョンなど、狭いエリアの中では、十分にモンスターとの距離を取れないことから、
状態異常系の魔法と、仲間の盾役との意思疎通が重要になります。
逆に広い場所でパーティプレイを行う場合、もし移動による魔法詠唱のキャンセルがなければ、
ダメージを入れて敵視を奪い、移動して逃げつつ距離を保ちます、その間に他のクラスで
そのモンスターをタコ殴りにしても、また移動詠唱、ダメージで敵視を稼ぎ……
という繰り返しで、容易に格上の敵を倒せてしまいます(カイト戦法とかキャッチボールとか色々あります)。
移動しながらでは魔法は唱えられない。近寄られて殴られると魔法詠唱が中断されてしまう。
ですが、一旦詠唱が完成すると、最も大きなダメージを出せる。
防御面と同じく、ハイリスク/ハイリターンなのが魔法使い、ということになります。
当然移動しながらでも撃てる「瞬間発動魔法」を使って、危機を脱するのも、
魔法使いをプレイするプレイヤーの腕の見せ所になります。
前述したとおり、移動しながらでも、敵に張りつかれてからでも、できる行動が、全くゼロではありません。
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■PvP(対人戦)における魔法使いとアタッカーのバランス■
これがPvP(対人戦)に主眼を移すと、移動しながら詠唱可能なことが、
更にバランスを著しく崩してしまう要因となります。
例えば以下のようなシチュエーションがあるとします。
ご自身を「ナイト」と想定して以下の流れを想像してみてください。
①とあるナイトが遠距離(最大レンジではない)から黒魔道士に魔法を撃ちこまれた
②ナイトは近寄らないと攻撃できないため行動を選択します
(ア)黒魔道士の有効魔法射程距離から逃げる(レンジ外へ逃走)
(イ)黒魔道士との距離を詰めるため黒魔道士に向かって走る
③黒魔道士はナイトの動きをみて……
(ア)逃げたナイトを魔法詠唱しながら追いかける
(イ)ナイトが近づいてきたら逃げながら魔法を詠唱する
(ウ)スリプルを詠唱して眠らせる(でも無効化(レジスト)される可能性がある)
④ナイトは追いかける決断をしたが、黒魔道士は逃げながら攻撃魔法を使ってきた
⑤魔法発動時の移動停止はあるものの、結局最初の距離を詰め切れずナイトは倒された
移動しながら魔法詠唱できることは、あまりにも魔法使い側に有利に働きます。
レンジ外に逃げる以外に、ナイトが取れる行動はほぼありません。
しかし、追いかけながら魔法が詠唱できる魔法使いは、逃げたナイトの足を止めるために、
スリプルを唱えたり、ヘビィで足を遅くしたりするでしょう。
結局、今の仕様のままでは、ナイトに勝つ術はほぼありません。
プレイヤースキルでもどうにもならない、いわゆる「クソバランス」です。
もちろん、詠唱が移動によってキャンセルされる仕様だったとしても、遠距離から最初の攻撃を
行った魔法使いの方が、有利ではあります。遠距離クラスvs近距離クラスなので当然です。
ただし、途中の魔法を一度でもレジストしたり、その高い魔法抵抗力で、
ダメージを軽減しつつ、HPを減らされる前に、ナイトが距離を詰めることができれば、
今度はナイトの独壇場です。シールドバッシュで黒魔道士を気絶させ、コンボを叩きこんで、
あっという間に黒魔道士を倒すでしょう。
(だからこそPvP装備では各種魔法耐性上昇装備が重要になります)
移動しながらでは魔法が詠唱できない、ということにより、ナイトには勝ちを拾える
可能性が出てきます。ですので、魔法使いの魔法攻撃可能距離(レンジ)の設定は、
キャラクタの移動速度と関連して、非常に重要なバランス要素となります。
現在のFFXIVでは、まだ個々の魔法に対して、シビアなレンジ調整は行っていません。
ですが、これから、それぞれの魔法に対して、しっかり射程調整も行いますので、
新生を迎え、PvPが実装される頃には、魔法使い自身も、前衛のクラスも、
PvPで名を挙げたいプレイヤーの方々は、それぞれの魔法のレンジをしっかり把握することが、
重要になってきます。黒魔道士の最大射程はどの魔法なのか、自分が受けた魔法はどの魔法なのか、
エフェクトの色や形で判断したり、ダメージから推測も可能です。
もちろん、どんなクラス/ジョブが、どの魔法を持っているか、覚えることが大前提です。
このようにクラス間のバランスを保ち、それぞれのクラスの特徴を出すことから
「魔法詠唱中に移動をすると詠唱がキャンセルされる」「移動している間、瞬間発動魔法以外は
詠唱することができない」という仕様が必要になります。これが理由その2です。
これも余談ですが、PvP中の魔法使いは、本当に面白いクラスです。
モンスターと異なり、相手もプレイヤーですので、敵視管理など関係がありません。
相手のプレイヤーから、常に魔法使い系クラスは狙われる立場にあります。
放置すれば遠距離から高威力のダメージを撒き散らし、味方を眠らせてしまい、
足止めを食らってしまいます。つまり、真っ先に倒したい相手だからです。
近づいてしまえば、容易に倒せますし。
ですので、PvPにおける魔法使いは、敵対するプレイヤーパーティと遭遇した瞬間、
敵の視界から消える努力をします。木立に隠れたり、即座に反転して距離を取ったり、
しかし、敵を行動不能にする役割もあるため、意を決して足を止め、スリプガを詠唱したり……。
リスクがある分だけ、フリー(敵に一切邪魔をされない状況)では、魔法が好きなだけ撃ち放題。
一人沈めたら、移動して次のターゲットを最大レンジやや内側から撃ち抜きます。
(最大レンジで魔法を詠唱すると、ダメージを受けた相手が、すぐにレンジから離脱できてしまうので)
それにより、相手が逃げる素振りを見せたら眠りや麻痺を入れて動きを止め、
敵が突っ込んできたら、距離を一旦離すために移動を行います。
相手が追いかけるのをやめたのを見たら、即座に反転してまた魔法詠唱……。
プロデューサーレターLIVEで「どの部族が好きですか?」とご質問頂いたときに
「ララフェルですね」と回答させて頂いたのは、小さいと「ターゲットし難い」「隠れやすい」からです^^;
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■実装について■
非常にオーソドックスな魔法使いのお話になりましたが、吉田もバトルチームも、
上記のイメージが「基本」にあります。もちろん、FFXIVならではの魔法やアビリティ、
特殊効果は入れていきますので、何もかも上記の基本になるわけではありません。
(連続魔、相手のインタラプトを無効化、詠唱速度上昇、詠唱可能距離拡大などなど)
そのためにも、今回魔法使いの「基本」を成立させるために、
「魔法詠唱中に移動すると詠唱がキャンセルされる」という仕様が必要だと考えています。
新生からでもいいのでは?という御声もあるかと思いますが、長くシステムに慣れ過ぎると、
やはり変化に苦痛を伴う方もいらっしゃいます。既にロンチから1年が経過し、この時点でも
「遅すぎる」という声を頂くのは、重々承知しています。
ですが、この基本に起動修正するために、他のクラスの調整も、バトルの根幹修正も、
ひとつひとつクリアする必要があり、本当に時間をおかけしてしまい、申し訳なく思っています。
すべてを一回のアップデートで行うには、あまりにも時間がかかりすぎ、結果的に複数のパッチで、
随時変更してくるという形を取ることになりました。
そして、今実装を行わないと、やはりバランスが崩れたまま、別の対応をすることになってしまいます。
処理的に可能であれば、それだけは避けたいと考えています。
ただし、別のポストでも記載しましたが「思うような操作感が今のサーバ処理では発揮できない」
というテスト結果が出た場合、皆さんにストレスを与えないため、今は別の方法を
模索せざるを得ないだろうと考えてもいます。
(もちろん、フィードバックを頂いた結果、もっと良い結論が出せれば、それにこしたことはありません)
ようやく、基本中の基本に到達できる時期が来て、これからが「FFXIVらしさ」の発揮しどころ、
そして新生へと繋がっていく、というイメージを持っていますので、
可能であれば、できるだけ早く検証を終え、この仕様を実装したいと考えています。
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■最後に■
最後に「なんだ、すげー当たり前のバトルかあ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、その当たり前の安定感があってこそ、出せる特徴が沢山あります。
何もかも新機軸、何もかもオリジナル、何もかも目新しい、それが正しいとは限りません。
(これはFFXIVに限らず、吉田のゲームデザインポリシーです)
実際、初期のFFXIVは、それがゆえにパーティプレイに戦略性が無くなってしまい、
それがゆえに、多くのプレイヤーの皆さんに、安心感も、没入感も、クラスアイデンティティも、
お伝えすることができず、失望を与えてしまったと考えています。
今後新生を迎え、他のMMORPGから移住を検討してくださる方もいるかもしれません。
というより、吉田はプロデューサでもあるので、移住して頂くだけの安心感や、
快適さは絶対条件だと思っています。ギルド単位でのゲーム移籍サービスなども検討しなくては…。
長年プレイしたMMORPGで蓄積した財産…育ったキャラクタ、思い出のアイテム群、
なによりも、ゲームを通じて知り合い、仲間になった多くのプレイヤーたち。
それらを振り切って、MMORPGの乗り換えを行うのは、並大抵のことではありません。
そして、FFXIVで新たにMMORPGを知って頂くお客様には、
ただでさえ敷居の高いMMORPGにおいて、「わかりやすさ」は絶対的な条件の一つです。
しっかりした基礎、安定した仕様とUI、複雑になりすぎず、アクション性が高すぎないバトル
それらの土台の上に、FFXIVらしい遊びを提供することで初めて、
多くのプレイヤーの皆さんが、適度なコミュニケーションの中で、ゲーム体験を共有できると
吉田はそう考えています。FFの名を冠するMMORPGなら、なおのこと「安定感と安心感」が必要です。
…となんだか、大きなテーマにまで発展してしまいましたが、それくらい悩み、決断をし、
先々を想定し、仕様を考えて進んでいるつもりです。
もちろん、皆さまから見ると、情報が足りない、更新速度が遅い、もっと話せ、
たまには寝ろ、コーヒー以外も口にしろ、などなど、仰りたいことが山のようにあると思います。
できるだけ、その声にお応えするため、今後も努力してまいりますので、
引き続き、宜しくお願い致します!
酷い長文になってしまい、毎度のことながら恐縮であります……。
それでは皆様、メリークリスマス!