1:25:22
≪トークセッション「開発メンバーに聞く!」≫
ゲスト:英語ローカライズリード マイケル・クリストファー・コージ・フォックス
多くのプレイヤーの方がマイケルと聞くと「ローカライズ」「歌を歌う」といったイメージがあると思いますが、海外フォーラムでは世界設定担当としてもお馴染みです。まずはパッチ3.2の世界設定について説明します。
1:27:34
«パッチ3.2における世界設定について»
パッチ3.2のコンセプトアートに描かれているのはミンフィリアです。行方不明になっていた彼女になにがあったのか、どうやって出てくるのか、マザークリスタルと彼女とはどんな関連があるのか、暁の血盟はこれからどんな道を歩むのか、「運命の歯車」の名の通り、一つの歯車が動くと他の歯車が動くようにパッチ3.2ではさまざまな動きや変化があります。今回のパッチタイトルに限らず、FFXIVのパッチタイトルは、複数の意味を持つものが多いですが、パッチ3.2タイトルはメインシナリオにも深く関わることで、パッチ3.1ドラゴンの姿を目にしたイシュガルドの民はどんな変化があるのか、またイシュガルド以外のリムサ・ロミンサ/グリダニア/ウルダハの人々はどう変わるのか、変化を望む人がいれば、望まない人もいるといった対立が大きくとりあげられていきます。ちなみに、歯車はアレキサンダーにもかかっています。
«パッチ3.2で実装されるインスタンスダンジョンについて»
1:31:52
- 逆さの塔
英語では「Antitower」ですが、シャーレアンがマザークリスタルを研究するための場所で、シャーレアンは学者であることを考慮して、「アンチタワー」という名前を考えましたが、日本では「反対する」や「否定する」の様なネガティブな意味合いを連想されるので、世界設定班の織田さんと話して、日本語版では開発名称の「逆さの塔」をそのまま使うことにしました。
また、「逆さの塔」の中に出てくるボスの名前を考えるときも苦労しました。
過去のFFのボスが出てくるので、その綴りをどうしようかという点が大きな悩みでした。そもそも、ローカライズチームができる前のナンバリング作品なので、翻訳の統一が取れていませんでした。15年前ぐらいにスクウェア・エニックスにローカライズチームができてからは統一しようとしています。FFXIVは過去のナンバリングタイトルをオマージュでボスなどを使用することがおおいのですが、たとえば、「テュポーン」は神話に出てくる「タイフォン」から取ったのですが、過去のFFでは「チュポン」という英名になっていました。本来間違っているのですが、当時の懐かしさを優先してそのまま使うか、正式なものに変えるか悩みどころです。ちなみにFFXIVでは「タイフォン」になっています。
1:36:49
- 木人討滅戦
日本語の名前は「木人討滅戦」ですが、英名では「Stone, Sky, Sea」となっていて、木人討滅戦が行われる場所を示しています。コンテンツのコンセプトを聞いて個人的に、修行する場所といえば、雲海が見える山の上の崖高いところというイメージだったので「Stone, Sky, Sea」という英名にしました。
コンテンツ開始時のカットシーンでは、木人が空からズドーンと現れる凝ったものになっているので、注目してください。
A:マイケル:仕事内容を単純に言えば「翻訳」ですが、あえて「ローカライズ」と呼んでいるのは理由があり、地域に特化した内容に翻訳しています。日本のプレイヤーが「かっこいい!」と思うことを、海外のプレイヤーにも同じく「かっこいい!」と思ってもらえることを目標にしています。1:39:29
Q: ローカライズチームは具体的にどんな仕事をしているのか教えてください。フランス語/ドイツ語版は、日本語版と英語版どちらをもとに翻訳していますか?また、パッチ3.0や3.1パッチの翻訳はどのくらい時間がかかりましたか?
翻訳で失敗することもありますが、失敗から学び、プレイヤーの方からの意見も聞いて、私たちも成長しています。
ローカライズチームはスクウェア・エニックス社内にいます。チームの全員が日本語を流暢に話せるので、基本は日本語から翻訳していますが、全員英語も完璧に話せますので、英語からも翻訳している場合もあります。たとえば、アイテム名やアビリティ名は英語からスタートするものも多いので英語ベースで翻訳する事もあり、クエストは日本語ベースで翻訳が開始されます。
翻訳時間ですが、FFXIVは翻訳テキストの量が膨大なため、パッチは全世界同時に出しているので大変です。シナリオチームだけではなく、様々なチームからテキストをいただきますが、どのチームもより良いものを作るために、ギリギリまで調整していることが多いため、スケジュールについてはいつも戦いです。
ちなみに拡張版の翻訳期間は2ヵ月半で、8人体制で翻訳文字数は150万文字でした。
さすがに膨大な量で終わらないのではないかと心配になり、他のプロジェクトから翻訳者をお借りしました。
吉田:その時フランスに出張で行っていたので、他プロジェクトのプロデューサーに電話をしてお願いした記憶があります。
マイケル:ただ、パッチ3.1で体制が少し変わって今では少し楽になっています。
A: マイケル:日本産のゲームなので全ての名称は日本語ベースで翻訳されていると思われるのですが、すべての名称は世界設定の織田と合同作業で行っています。各チームから実装されるもののテキストベースの資料や、映像を見ながら織田の希望や、自分から英語のアイディアの提案を行い、話し合ってローカライズをしています。日本語からローカライズすることもあれば、逆に英語からローカライズする場合もあります。1:45:08
Q: モンスターの技の名称はどうやって決めているのか教えてください。
例えば、モンスターのトンベリが使う「呪いの言葉」は英名だと「Scourge of Nym(スカージ・オブ・ニーム)」となっていてかなり響きが違うものになっています。「呪いの言葉」は日本語から英語に翻訳したアクション名で、「呪い」という言葉は本来「curse(カース)」なのですが、ゲーム内の様々なところですでに使用していたので、アクション名に使うと他の物と間違えられてしまうという懸念がありました。なので「curse」に近い意味の言葉を探して、『「ニーム」を滅ぼした呪い。』という言葉と「滅ぼすもの」などの意味を持つ『Scourge』を組み合わせて「Scourge of Nym」にしました。日本語で説明すると「ニームを滅ぼしたもの」=「呪い」という意味です。
今度は逆に英名から日本語に訳したものの例をあげると、クリスタルタワー:闇の世界に出現するモンスターのケルベロスが使用する技「ヘルチャージ」は、英語名だと「Hound Out Of Hell(ハウンド・アウト・オブ・ヘル)」です。「Hound Out Of Hell」は英語のことわざの様なものに「Like a bat out of hell(ライク・ア・バット・アウト・オブ・ヘル)」「地獄から逃げる蝙蝠のように早い」というのを元に、「地獄」というイメージのケルべロスと、攻撃モーション自体が「突進のような早いアタック」だったので、ダジャレとして「Hound Out Of Hell」というアクション名にしました。
ただ、日本語名にした時にカタカナ表記は長くなりすぎるので、技の名前のポイントを「ヘル」に決めて、日本語では「ヘルチャージ」にしています。
日本語と英語で差の無いように「ポイント」をしっかり心がけたローカライズにしています。
もう一つフォーラムで目にした質問で、アイメリクの称号の話をすると、日本語では『「蒼剣」のアイメリク』ですが、英名では「Aymeric the Blue(アイメリク・ザ・ブルー)」となっています。「剣」自体が英名からは消えているのは、アイメリクの呼び名が英名の「Aymeric the Blue」が先に決まり、織田さんに相談したところ、日本の呼び名は漢字2文字を使うのが一般的なので、『「蒼のアイメリク」よりも「蒼剣のアイメリク」にしたい』となり、ポイントは「蒼」なので日本語/英語ともに「蒼」の意味は残したローカライズになりました。
では、カタカナの場合はどうするのかは、「ハウケタ御用邸」で説明します。英名だと「Haukke Manor(ハウッケ・マナー)」になっています。日本語にある「タ」が消えているのは、完全にミスです。
パッチ2.0当時、翻訳を担当していた人が、「タ」が抜けたまま名前を付けていたのを、誰も気が付かずにリリースしてしまい、気が付いたのはリリース後だったので内緒にしていました。
吉田:本当に今日はじめて聞きました。ローカライズについてこれだけ熱く語ってくれていたので、様々な理由があって「ハウッケ」になっていたものだと思っていたのに、ミスとは思わなかったです。
A: マイケル:まず命名ルールとして、FFXIVの世界観を壊さないように、インゲームのキャラクターが見るものは、きちんとエオルゼアの世界の中にしかない名称に設定しています。1:52:05
Q:海外の人にしかわからないネタが仕込まれた名称やテキストがあれば教えてください。F.A.T.E.のタイトルは映画や小説のオマージュが多いですが、海外版ではどのような名称になっているか知りたいです。また、麒麟を取得できるアチーブメント名が「Ichiban」など、面白い翻訳が多いですが、翻訳時の名称はどうやって決めているのですか?
一方でプレイしているプレイヤーが見るものは現実世界に存在する名称のオマージュ的のものもOKという風にしています。このルールは旧FFXIVからずっと守っています。例えば木の妖精と戦う『怒れる守護者「グレートオーク」』というF.A.T.E.がありますが某バンドの曲名を文字って、英語では「Smells Like Tree Spirit(スメルズ・ライク・ツリー・スピリット)」にしていたり、オレンジ入りの箱を集めるF.A.T.E.の『上には上がある』は英名で「The Orange Boxes(ザ・オレンジ・ボックシーズ)」にしています。
アチーブメントにもこのようなパロディ的な要素を入れています。
A: マイケル:この質問をいただいた時に織田とも話合ってどこまで話すかを決めたのですが、話せる部分までお話しします。1:54:50
Q: アウラに関する世界設定がもっと知りたいです。角は生まれつき生えているのか、他の種族からはどう思われているのかなどが気になります。
- ゼラについて
集落はドマの近くの「アジームステップ」という大草原があり、多くのゼラがここに住んでいます。彼らが信仰している「太陽神アジム」から由来している地名になり、太陽が降り注ぐ草原で家畜が育ち、恵み豊かな場所です。エオルゼア十二神の一人に太陽神「アーゼマ」がいますが、別の神様です。
しかしながら、名称は似ている部分があるのでもしかしたら遠い昔になにか関係があったかもしれません。
- レンについて
ゼラは遊牧民的な部族ですが、レンはひとつの地に定住する部族で、ドマに住む者や、ひんがしの国に住んでいる者もいます。しかし、ガレマール帝国の侵略で難民が多数出てしまったので、エオルゼアに流れてきている人が多いです。例えば「ユウギリ」がエオルゼアの地に来たのにもこの背景が関係しています。
他の種族からどう見られているのかという点は、冒険者が多いことから差別的なことはないですが、
謎の多い種族なので警戒している人もいなくもないです。
ちなみに、織田からもらった情報ですと、ゼラとレン以外にも知られざる古い部族がいるとか、いないとか・・・。
A: マイケル:海外に行くたびにプレイヤーから質問されるのですが、「第三の目」は空間認識能力に関わる器官といわれています。それによって、他種族よりも空間を瞬間的に感じ取ることができまるので、飛空挺の操縦や銃器の扱いが得意だと言われています。シドは普段ゴーグルで隠して操縦していますが、ゴーグルを外すとより操縦がうまくなるのかもしれません。1:58:47
Q: ガレアン族が持つ「第三の目」にはどんな役割がありますか?
A: マイケル:あります。2:00:09
Q: リヴァイアサンのテンパードのことを「Drowned(ドロウンド)」と呼ぶと聞いたことがありますが、ほかの蛮神のテンパードにも同じような名前があるのでしょうか?もしあれば教えてください。
吉田:日本では蛮神をあがめる者すべてを「テンパード」と総称していますが、海外ではそれぞれの蛮神を崇めている者はすべて名前が違います。
マイケル:最初の蛮神が「イフリート」だったので、「火」によって製錬される意味を持つで「Tempered(テンパード)」と名付けました。その際に日本語の名称をどうするかの話になり、当時の開発内では「信者」という単語をつかっていました。しかし、「信者」だとあまりにもインパクトがないので、当時のシナリオライターだった新納と話して、「テンパード」になりました。ただ、日本語で毎回名前を変更すると横文字の羅列になってわかりづらいと感じたために、日本語はすべて「テンパード」に統一されました。
英語だと、「Tempered」はやはり「火」に関わり強い意味合いになってしまうので、対局となる「リヴァイアサン」が出てきた時に違和感が生まれてしまいました。そのため、『一度溺れて死んでしまった者達は死を恐れない強い戦士』という意味で、「Drowned」と名付けました。
A: マイケル:書籍化となると世界設定は全部文字なのでローカライズが大変で、パッチの翻訳を優先するか、書籍の翻訳を優先するかの選択肢になった場合、どうしてもパッチが優先になります。ただ、多くのプレイヤーからご要望をいただいているので、日本語版/英語版を出します!10月の北米ファンフェスにあわせて発売できるようがんばって作ります!2:02:13
Q: 蒼天騎士団のプロフィールやダンジョンの設定など、日本のメディアで世界設定に関わる記事が公開されていますが、世界設定をまとめたものを書籍化したり、ゲーム内でコンテンツとして実装する予定はありますか?
A: マイケル: パッチ3.2でヒルディは帰ってきます!2:05:52
Q: ヒルディとナシュについてそろそろなにかありませんか?
どのように帰って来るのか、誰を連れて帰ってくるのか…、サプライズなのでこれ以上は言いません!ぜひお楽しみに!
※動画ではカットシーンのヒトコマを画像でご紹介しています。