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    新しい日記帳に刻まれる、新しい記憶。
    頑張れ!元気を出して!



    ちゃんと笑えてたかな
    10月7日 曇り

    新しいノートに、新しい日記を始めます。
    このノートは、班のみんながお金を出し合って買ってくれました。
    紙はまだ品薄で、勉強用にやっと1冊支給される状態です。かなり無理をしたはず。

    お姉ちゃんからもらった日記帳は、結局見つかりません。
    どうしよう。どうしたらいいんだろう。
    あの日からそんな事しか考えられてなかったせいかな。たくさん言葉が出てきそうになったけど、どれも言葉にならなかった。

    みんなには「ありがとう、日記付けるね」って、笑顔を返したつもり。
    日記を付けたら、良いこと思いつくかも。
    しばらく休んでたけど、このくらいは許してくれるよね。




    すごいこと思いついた!
    10月23日 星空

    私って天才かも!ひらめいちゃった!
    日記帳は無くしちゃったけど、日記は過去視すればいいじゃん!

    ‥‥でも、狙って過去視する方法が分からない。こないだは、光?に触れることができた時に『視れ』たみたい。だから後は「光」の探し方?感じ方?を見つければ何とかなりそうなんだけれど。

    裁判長に聞いてみたら、過去視能力者はあの災害での戦いで全員行方知れず、そもそも狙って過去を見れた人は知らないって。うーん、自分で開発するしかないのか、がんばろう。




    しこうさくご
    10月24日 雨

    まずは最初の手掛かりと思って、初めて過去視出来た広場の壁を見に行きました。天気は悪かったけど、暗いほうが光を見つけやすいかな?という期待は結局、手がかりも無く調べてるうちに容赦なく本降りになった雨に、止むなく中断を余儀なくされて。

    なんだか寒気がする‥‥。もう寝よ、おやすみなさい。




    うう、かぜひいた
    10月25日 あたまいたい

    さむい。広場になんていかなきゃよかった。
    今朝から熱が出たので、今日はずっと部屋に閉じこもってます。昼下がりにキャプテンと裁判長がお見舞いに来てくれたけど、あの二人がそろってるとうるさくて‥‥。突っ込む余裕がないときに頭痛の種を増やさないでください。

    でも、「一人じゃないお守り」っていわれて、3人おそろいのLSを貰いました。今は使えないけど、エーテライトが復活すればちゃんと会話もできる本物です。

    そういえば、お姉ちゃんからもLSを貰ったんだった。今日は2つのLSをお守りにして寝よう。良い夢見れたらいいな。




    ユメ
    10月26日 ふわふわ

    まだ熱は下がらないけど、頭痛が消えたのでだいぶ楽。
    でも、ふわふわしてる。そのせいか、面白い夢を見ました。二人がLSショップで、お見舞い品をあーじゃない、こーじゃないって相談してる夢。

    「あら、このピンク球、かわいいじゃない!」
    「ショッキングピンクがチャームポイントですか?海賊志望なら黒じゃないですか?それは安っぽく感じますが。」
    「あら、私が提督になったあかつきには、マザーシップはピンクで固めるわよ?」
    「リムサの未来は相当ショッキングになりそうだ(バキッ)」
    「おじさん!これ3つお揃いで頂戴!」
    「お金出す、僕の意見は無視ですか‥‥。」


    目が覚めたとき、いつの間にか手に握りしめていたピンクの球は、ほんのり輝いているように見えました。明日は学校、行けるといいな。
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  2. #12
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    光が見えた!
    10月27日 バンザイ!

    わかった、わかったよ!過去視の光はリンクパールに宿るんだ!

    昨日の夢を二人に話したら裁判長が、

    「それ、過去視じゃないですか?まったく同じ会話をしたはずです。」
    「ぶん殴るタイミングまで完璧ね!」
    「そこは余計です。」
    「何か触媒になるようなものがあるんでしょうか‥‥。」

    ポケットに手を突っ込み、取り出したかと思うと、何かを指で真上にはじいたキャプテン。きらりと光ったそれはショッキングピンクの球。

    「これじゃない?」
    「ああ、その可能性は大きいですね。」

    もう一つを取り出し、机には2つのパールが並びました。

    「何か見える?」

    最初は気が付かなかったけど、目をつぶって、やっと『光』を見つけました。パールの真上、「ちょうど私の目線と同じ高さ」に、2つの光が浮かんでる。恐る恐る触ってみると、夢の出来事が、まったく同じように目の前で再生されました。

    「じゃあ‥‥」

    今度はお姉ちゃんのパールを机に取り出します。『光』は、さっきと違って、目線の高さから始まって、点々と沈み込むように下に向かって並んでいます。一番『下』の光は、地面の下に潜り込んで光っていました。

    「うーん、これ、下の方はどうやって『掴む』んだろ‥‥」
    「こら(パコッ)」

    一人で盛り上がってる私。キャプテンに頭を小突かれて我に返った後は、下に伸びる『光点』の存在を何とか説明し、そこから後は検討会でした。

    まだ分からないことも多いし、明日は細かいメモを取る予定。興奮してて目が冴えてるけど、明日も頑張らなくちゃ。




    光球メモ
    10月28日 難しい

    リンクパールに宿る『光球』についてのメモです。
    といっても全力で突っ走るキャプテンと裁判長の話は難しくて、理解できてるかどうか、かなり不安。


    ・光球の性質
    エルにしか見えない光。触ると「過去視」が出来る。一度触った「光球」は消えてしまう。そのうち復活するのかどうかは不明。過去を記憶した何か、と考えられる。

    ・光球の位置
    リンクパールと同じ水平位置に、「エルの目線」の高さを基準に浮かぶ。リンクパールを上においても下においても、光球の高さは動かない。エル自身が動くと、目線の高さに合わせて高さが変わる。

    ・高さの関係
    推測だが、過去の記憶ほど「下」にある?前日程度だとほぼ目線の位置。目線より上には存在せず、未来視はできない模様。

    ・光球とは何か?
    今のところ不明。リンクパール以外にも宿るのか?リンクパールの材質に関係するのかは継続調査。

    ・最初に広場で過去視が出来た原因は?
    恐らく壁際、足もとに被疑者のリンクパールが落ちていたと推測。後日の調査で光が無かったのは、すでに回収されていたため?


    お姉ちゃんのリンクパール、かなり下の方まで光が潜ってるんだけど、手が届かない。そもそも目線が基準だからどうにもならない。限界があるってことかなあ‥‥。




    潜る
    11月14日 晴れ

    昨日、幻術ギルドの社会見学がありました。霊災の時の避難場所だった旧本拠地は神木が倒されたために閉鎖され、今は新しい神木の根本に本拠を移しています。

    で、部屋に戻った後に幻術士さんの瞑想を真似してみたら、思いがけずうまくいった!あの姿勢って意味があるんだねえ。リンクパールに意識を集中して瞑想すると、自分の体から離れて、下に潜ることが出来ました。

    そのまま光球をたどり、一番下に光る点。触れると、冒険者のお姉ちゃんがいました。どこかの都会の、LSショップの一角。キョロキョロと見渡す視線が、最後に私と出会って、ニコニコしながら手が近づいてきて‥‥。

    懐かしさでひとしきり泣いた後、「もうこの光景は見れないんだ。」と思って急に怖くなった。お姉ちゃんとは、あと何回も会えないかもしれない。

    ‥‥これが昨晩のこと。いつの間にか寝ちゃってて日記も書いてなかった。今朝も遅刻しちゃうし、はずかしいいい。




    二人の意見
    11月16日 曇り

    光球が消えてしまう不安を二人に相談しました。結論は、「しばらく潜る練習だけにしておきましょう。光球には触れずに、特徴の観察記録に徹してください。」とのこと。記録を残すのはもうクセになってる感じだから、後は潜る練習かな。

    「ウルダハから機材を取り寄せてる所だから、しばらく待っててくれないかな」とは裁判長の弁。こないだから二人はまた難しい話をしてるようで、なんだか嫌な予感しかしないんだけど‥‥。
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    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 06:04 PM.

  3. #13
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    A.E.1568年12月2日

    かつて、偉大な測量士が、広大なエオルゼア全土をその足と測量機ひとつで測定し、現在の地図の原型を作った。太古の文明は空を支配して、世界すべてを測量したとも言われている。

    そして今、新たな「眼」を得たことで、僕たちは時を測る手段を得ようとしているんだ!

    ‥‥ということを熱く語ったら女子二人にかなり引かれた。少し僕らしさを外したらしいので自重しよう。

    「まあ、男子がロマンを語るのは悪くないけど。これが三角測量機?」
    「そうだね、これは建設とかで普通に使うもの。」
    「‥‥ねえ、これ、高かったりしない?」
    「大したことないよ、ちょこぼ2匹と、セットのキャリッジを合わせて1台買えるくらい。」
    「っひ!?」

    おっかなびっくり手を伸ばそうとした書記長が驚いて手を引っ込める。

    「お金なら大丈夫。以前お小遣いで買ってたゴールドバザーの土地が建築ラッシュでかなり高騰してさ、もう売り抜けてるから(バコッ)」
    「とりあえず一般庶民を代表して殴っとかないと、と思った」
    「‥‥」

    たとえ女子が横暴だったとしても、男子はジェントルマンたるべき。祖父の教えは僕の誇りだ。けっして反撃したら10倍返しの結果が見えているから諦めているわけではない。

    「まずは、普通の使い方から覚えていこう。」

    設置方法・水平の取り方・スコープの合わせ方・角度の測り方‥‥。距離の算出については後で勉強するとして、まずは使い方一式を叩き込む。流石にキャプテンは異常に呑み込みが早かったが、書記長の方は怖さもあるのか、一通りの要領を得るのに数刻を要した。書記長が使えないと意味が無いので、二人でのんびり教える。

    「そう、そこに見える十字を、あっちの基準に合わせて。」
    「こ、こう?」
    「今日、季節外れの陽気でよかったわねー。あー、ポカポカする‥‥」
    「あれ?うまく合わないよ?どこか間違ってる?フラフラして‥‥」
    「おいそこ!居眠りするなよ!」
    「あー、きもちいー・・・」


    (artwork Shelldy)

    キャプテンはのんびりし過ぎだった。ともかくここからが本番。

    「さあ、問題は『過去視の光』がスコープから観測できるかどうかなんだけど。どう?」

    数分格闘していた書記長の回答はNoだ。

    「それで?対策はあるんでしょ?」
    「スコープから見えるのは通常の光だけだからね。だから、こんなのも用意した。」

    見た目はリンクパール。受け取ったキャプテンは、少し手の上で転がした後、
    「魔法系の何か?」と問いながら、書記長に手渡した。

    「うん。魔術的な交感関係を、光で可視化する魔法が封印されている。」

    利用者と、利用者が交感できる魔術的存在との間に結ばれた糸を、視認できる光に変換する魔法装置。表向きは地震などで生き埋めになった人を、リンクパールなどを手掛かりに迅速に探す道具だ。ウルダハの王族貴族の屋敷に、魔術的盗聴道具などが仕組まれていないかを探す技術が元になっていることは、裏事情に多少通じるものならだれでも知っている。

    「『潜る』ことが出来るなら簡単に使えるはず。これを手に持って、瞑想してみて。」
    「ちなみに、このパールのお値段は?」
    「キャプテンの見解として助言すれば、聞かない方が幸せじゃ無いかと予想する。」
    「うう‥‥。」

    お金なんて稼げば良いだけだと思うんだけどなあ。グリダニアはよっぽどお金に縁が無い土地なんだろうか?必要以上にビビってる書記長がやっとのことで集中に入るまでの間、取り留めなく考えた。

    さて。

    「『潜れた』ようだね。手に「パール」が残ったままなのはわかる?この装置は、術者が手に持つ実体の宝石と、魔法的な霊体に分離するんだ。パールを持って『過去視の光』まで向かって。」

    手から宝石の光が漏れて伸びている。光の先に書記長の意識がいるんだと思うと、ちょっと不思議な感覚だ。光の先っぽが頼りなく揺れて、そして地面に落ちて消えていった。光の線が結構な角度になったころ、動きが止まる。

    「持っていったら、手に持った『パール』を、『過去視の光』に触れない程度に、なるべく近くに持って行って、そしてパールから手を放して戻ってきて。」

    わずかに線が揺れ、しばらくのちに書記長が目を開く。光を放つ手元のパールに驚いたが、やがて疑問の表情が浮かんだ。

    「あれ?このパール浮いてる?」
    「魔法の効果は10分程度。切れるまでは浮いてるから、その間に光の角度を測って。」
    「切れたら落ちるって事よね、よし、測定は書記長に任せた。」

    深さを測るために、都合2回の測定が終了。MP消費は微々たるものらしく、慣れた人なら半日で100回近くの測定をしても平気だと聞いてたんだけど、どう見ても全霊使い果たした書記長がいる。

    「疲れないって聞いたんだけど、もしかして潜るのが疲れるのか?」
    「高価な機材で10分以内に測定するのが、緊張感ありすぎて、つらい。」
    「そこは慣れよ!これで貴方は時の測量士ね!」
    「実感ないなぁ‥‥。」


    この後、暗算で深さを計算しきった体育会系地球外生物に関する話題は割愛する。計測に慣れてもらうため、機材一式は書記長に預けた。本人はかなり嫌がってたが、視えるのも本人だし、慣れてもらうしかない。それで今日は解散だ。

    自室に戻った彼は、机の引き出しから小箱を取り出し、取り出したパールに語りかける。

    「いつか彼女を、貴方に紹介できる日が来るかもしれませんね。」

    パールの地の底で、光がきらめいたような気がした。
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    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 04:16 AM.

  4. #14
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    さてどうしよう
    A.E.1568年12月2日 ポカポカ陽気

    今日は疲れました。私はまだ9歳と11か月なのです。あの二人と一緒に居ると要求水準が跳ね上がりすぎるのです。りふじんなろうどうきじゅんに訴えるべきだ、と大人の人が叫んでいたのを思い出したのです。

    それにしてもこの測量装置‥‥。誕生日プレゼント?の前払いなのかなあ。どちらかというと巨大な借金背負わされた感じしかしないんだけど。触って慣れるように、と言われたけど、今日はもう見たくもありません。おやすみなさい。




    黙々と調べる
    A.E.1568年12月3日 くもり

    昨日は日記を付けた後、やっぱり気になって測定してました。

    結構遅くなっちゃって。今日も眠いけど、せっかく用意してもらった機材だし、ちゃんと調べないと。あーやっぱり、これは借金だ。早く返済しないとまともに寝れそうにないや。

    でも、結構慣れてきました。最後の方は1測定5分切ってたし。角度の測定の後は深さを計算しないとだめだけど、私には計算方法がよく分かりません。さんかくかんすう?これはキャプテンに丸投げしちゃえばいいか。




    初めての日記
    A.E.1568年12月7日 くもり

    やっと見つけた!なつかしいなー、お姉ちゃんからノートを貰った日の日記。うわー、字、へただなー。内容幼いなー。恥ずかしいなー。

    とりあえずこれで何とかなりそう。測定はしばらくお休み。今日から、昔の日記を写す作業です。
    (7)

  5. #15
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    A.E.1568年12月20日

    失敗した。大失態だ。何が「未来のキャプテン」だ。
    全部聞いて全部見て全部覚える。そして船の羅針盤として正しい方角を見つけるのがキャプテンの役目。なのに私は見逃した。普通じゃない行いをしたら、普通じゃない代償を払う必要がある。そんな「当たり前」を、事が起こってから気が付くなんて。

    始まりは静かだった。学校の朝、

    「今日はエルさんはお休みです。」
    「病気なんですか?」
    「んー、熱とかは無いから心配はいらない、とは伺っています。」

    それが二日前。結局、書記長は昨日も今日も休んだ。今日は彼女の誕生日。心配無いという言葉をうのみにして、私たちは彼女の誕生パーティの準備を優先させていた。そして今、静かに寝息を立てている彼女の前に立ち尽くしている。

    「どうして‥‥大したことないって言ってたじゃない!」
    「ああ、見たとおり、普通に寝ているだけだ。熱があるわけでもない。若干やつれてる感じだったので、疲れが出たのかと休ませていたんだが‥‥。ただ、起きない。」

    「食事とかは大丈夫なんですか?」と裁判長。
    「ああ。正確には寝ているというより、自我が極めて希薄、という感じでな。呼びかければ生返事はするし、枕元に食事があれば食べてるし、トイレには自分で行くんだ。だから気が付くのが遅れた。」

    「自我が薄い‥‥?あの、彼女、直前の様子で何か変わったことは?」

    私が問う。

    「17日の晩寝るまでは普通だったよ。晩御飯もいつもの時間に取ったし。ただ、最近結構夜遅くまで起きてる感じだったな。何かけったいな装置を取り出してゴソゴソしてたが。」

    裁判長と顔を見合わせる。装置といえばあれしかない。机のそばに置いてある計測装置一式を確認してみたけど、綺麗に片付いていた。計測中の事故なら、片づけることは不可能だ。裁判長は机の引き出しから日記帳を取り出していた。

    「僕たちがプレゼントしたものです。やっぱり彼女、マメですねえ。機材を渡した当日から、『過去視の光』の測定結果を残してますね。」

    後ろから覗き込む。1番、2番、3番‥‥、一番深い「光」から順に、色などの特徴が書き込まれてた。一部のモノには更に「角度」と「計測日」が記載されてる。計測日は「12/3」から始まり、「12/17」で終わっていた。

    「ん?この×印はなにかしら?」

    更に一部の項目に、「×」マークと日付が書き込まれている。すべて、2年以上前の日付だ。その一覧表からは他に情報らしいものは無かったので、ページを進めた。そこからは普通の日記。日常の取り留めない出来事が並ぶ。

    最近の日記まで読み進めて、唐突に違和感があるページが現れた。

    「いきなり幼くなりましたね。これは古い日記ですか?しかし、彼女は日記帳を失ったはずですが‥‥?」裁判長が呟く。

    たどたどしい筆跡に大きな文字。今の書記長からは想像できない、でも何かしら面影を感じる文章。それは私たちが知らない、災害前の彼女そのものだ。ノートを貰ったこと、冒険者のお姉さんの事。数ページ読み進めて、私は気が付いた。

    「書記長、よっぽどこの『日記』が大事だったのね。」
    「過去視に拘ったのは、この日記を取り戻すため、ですか。」

    式典の日に奪われた日記帳。彼女が持っていたリンクパールは、常に日記帳と共にあったのだろう。日記の再現をするために、彼女は過去視を繰り返したらしい。

    そして、最後のページに込められた『恐怖』に出会う。


        こわい こわい たすけて


    「‥‥なんですか、これは。」
    「ちょっと、一覧表のページに戻って。」

    一覧表に記載された角度を見て、私は深さを記述していく。その作業を繰り返し、すべての深さを記述した後、×印とその横に書いている日付を見比べた。そして一番浅い×印を探す。そこには過去の日付が書かれていない。

    「A.E.1567年9月5日。この日記は、災害の日だ。」
    「助けて‥‥。」

    唐突な声に驚き、二人はエルの顔を見る。彼女の眼には涙が光っている。

    「ねえ、今さらあの日に捕らわれちゃったの?‥‥情けないわね!帰ってきなさい!」

    数発ほっぺたを引っぱたき、直後に思いがけず強い力で引きはがされた。
    「落ち着け!」裁判長の声。

    一瞬の涙が嘘のように、少し赤いほっぺたと、穏やかな寝顔が視界に入る。
    力が抜ける。へたり込む。


    「これはまた、今時珍しい病気だね。何があったんだい?」
    扉が開く。突然現れた女性の声にも、私たちはしばらく無反応だった。
    (9)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 06:06 PM.

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    わあ、わああ。エルちゃん。
    何のんきに寝てるのっ。



    夢の記憶
    ???? ????

    一度も出会った事がないはずの人に、出会った記憶が残ってる。
    私は立っていた。

    「きれー・・・・」

    森が消えた、満天の星空。そして北の空に輝く光の柱。
    とても高く、月に届くかのように。

    「ねえ、おじいちゃん。あれはなーに?」
    「あれはの、希望の光じゃよ。」
    「どこまで伸びてるの?」
    「それはな、XXXXX‥‥」

    世界は曖昧で、おじいちゃんもいつの間にかいなくなって。
    ‥‥あれ、あの人だれ?わたしは、だ‥‥れ‥‥?
    (9)

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    A.E.1568年12月20日

    「本当に書記長‥‥エルは大丈夫なの?」
    「ああ、少し時間はかかるけど戻ってくるよ。」

    鮮やかなステンドグラスに彩られた建屋の一角。冒険宿「カーラインカフェ」のテーブルのひとつを、少し奇妙な3人組が占拠している。キャプテンと裁判長、そしてこの冒険宿の主、ミューヌだ。

    「貴方たちが噂の3人組か。」
    「うわさ?」
    「天才二人に振り回されてる可哀そうな女の子がいるって話。結構有名だぞ?」
    「‥‥」

    言われた二人はかなり本気でへこんでるように見えた。(ふむ、少し不謹慎だったか。)状況が状況だけに、ジョークで場を和ませる戦略を取るべきではなかったらしい。しかし別段気にした風もなく、彼女は話を続ける。

    「結構難しい話になるんだけど、ちゃんと付いてくるように。」
    「はい。」「もちろん。」
    「まずあの子の症状だけど。あれは『アニマ欠乏症』による意識障害なんだ。」
    「アニマ?」
    「ああ、今の子はそこから説明する必要があるか‥‥。」

    ふむ、と間を取った後、話は続く。

    「エーテライト、は知ってるかな。」
    「都市間通信網の根幹を支える設備、だとは。去年の災害で壊れたままですよね。」
    「えーと、リンクパールの通信や、テレポやデジョンのサポートをするんだっけ。」
    「正解。じゃあ、テレポに使用制限があるのは知ってるかい?」

    かぶりを振る二人。マスターは説明する。

    ・冒険者にはアニマが100与えられること。
    ・テレポを使用するごとに既定のアニマが消費されること。
    ・1日に一定数回復すること。
    ・アニマが0になったらテレポの使用が禁止されること。
    ・アニマの残数管理は冒険宿が配布するリンクパールで行っていること。

    「あれ?なんで書記長の病気にアニマが関係するの?今テレポ使えないじゃん。」
    「そうだね、不思議だ。だから詳しく事情を聞きたいんだ。」

    二人は顔を見合わせる。そして裁判長。

    「そもそも、アニマとはなんですか?冒険宿が配るクーポンみたいなもの?なら、使いすぎたからって病気になるのはおかしいじゃないですか。」
    「お、話が早くて助かるね。良い質問だ、ここから本質の話に入るよ。」

    「アニマとは、『光』を示す単語。自我を構成する個々の要素。『人』の心は、沢山の『アニマ』が集まった一つの塊だとされている。人だけじゃない、この星すべての命には、アニマが必要だ。」

    いきなり話が飛躍する。このタイミングで疑問を挟まない二人に彼女は内心舌を巻くが、それはおくびにも出さない。

    「花が好き、トマトが嫌い、オムライスが好き。この一つ一つの感情、思いが1つの『アニマ』。例えばキャプテン。」
    「わたし!?」

    いきなりあだ名で呼ばれて、彼女は目を白黒させる。

    「君の『好き』『嫌い』のアニマを全て調べて、まったく同じアニマの組み合わせで一つの『心』を作ったら、それは君かい?」
    「‥‥心がアニマなのよね?まったく同じなら、同じじゃないの?」
    「じゃあ、君の目の前に、『君と同じ心』が居たら、それは『君』?」
    「え、私の前に『私』?心が同じなら私じゃないの?」
    「いや、まったく同じから始まっても、別れれば別人じゃないか?」
    「う?あー、何かおかしいわね!貴方、何か引っかけ混ぜてんじゃないの?」
    「お、気が付いたか、これは早々に降参しておこう。」
    「もー!こっちはマジなんだから横道逸れないでよ!」
    「ごめんごめん、必要な横道なんだ、許してくれ。」
    「うー‥‥。」


    「さて、もっと正確な話をしよう。」

    ミューヌは懐から小銭を取り出す。1ギル・5ギル・10ギル‥‥。10枚ほど取り出し、傍らにあったティーカップの皿に乗せた。ティーカップの残りを一気に飲み干すと、彼女は話を続ける。

    「この皿が僕の『心』だ。そして心の中に『アニマ』が詰まってる。」

    硬貨を指でつつきながら、そう告げる。

    「さあ、今度は裁判長。ちょっと君の皿を空けてくれないか。」

    言われた裁判長はカップを手に取った。そのまま、少し飲もうかとカップを口に近づける。

    「僕は君を愛している、この心を伝えたい。」

    盛大に吹き出す。
    「げほっ、な、ななんですか、いきなっ!げほっ!!」

    半分言葉になってない。ミューヌは笑うと、硬貨を1枚摘み上げた。

    「あはは、説明のための例だよ。さあ、僕は君に『心』を伝えるよ?」

    そういって、硬貨を裁判長の皿に落とした。チリン~~ッッ。硬貨はしばらく皿の上で回った後、最後に軽い音を立てて倒れた。音が室内に響く。

    その様子をじっと見つめていた裁判長は、視線をそのままにぽつりとつぶやいた。

    「‥‥アニマは、『心』の要素ではなく、『心』を伝えるための媒体‥‥手紙のようなもの、という事ですか?」
    「そうだ!本当に話が早いね!うん。『心』の本体はアニマの方じゃなくて、この『お皿』だと思ってくれ。アニマは地脈から少しずつ供給される。そして、心の中に詰まっているアニマを外に放出することによって、心の中身が相手に伝わる。」
    「心は、伝えるもの‥‥。」キャプテンは、手に取ったカップの液体をぐるぐる回しながら、一言。ミューヌはうなずき、二人の視線が自分に集まるのを待った。

    「話を戻そう。君たちの友人は、『アニマ欠乏』に陥った。結果、心を伝えることが困難になり、きわめて自我が薄く見える状態になっている。これがアニマ欠乏症の正体だ。心が壊れたわけじゃないから、適切な管理下に置いてアニマの回復を待てばそのうち『目覚める』よ。」

    二人は「ふぅ~~~っっ」と聞こえるような溜息を付き、脱力した。

    「ま、そういう事なのでとりあえず安心してくれたまえ。‥‥ここからは事情聴取だ。何やらかした、君たち。隠し事は無いかい?」

    再び硬直する二人だった。
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    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 06:09 PM.

  8. #18
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    大寝坊
    今日は何日? すごい陽気

    「おはよー!今日はすごく暖かいよ~。」
    「‥‥あれ?おはよ?なんでいるの?」

    キャプテンがドアの所から覗いている。一瞬表情がおかしかったのをここで突っ込んでおくべきだった。

    「何言ってんの!大寝坊してんだよ!あんた重役出勤するような大物じゃないでしょ!」

    確かにおかしい。今は12月、いくらなんでも、この暖かさはすでに午後の領域だ。飛び起きて、そして目の前が暗くなって、キャプテンが支えてくれなかったらベットから落ちてた。

    「ああ、急かしてるわけじゃないからさ。今日はゆっくりいこ。」

    優しかった。せめてここで気が付くべきだった。

    それにしても体調が悪い。とにかく力が入らないのが参った。何とか歩けるけど‥‥休んでもよかったけど、せっかく迎えに来てくれたんだし、学校に行くことにしました。

    そして道中で更に驚く。

    「昨日はけっこう、雪が積もってなかった?」
    「まあ、こんだけ暖かいとねー。」
    「え、梅の花が咲いてるよ!?」
    「いじょうきしょう、っていうそうねー。」

    そして学校について、確かに大寝坊していた事実を知らされた。

    だめだ、日付を書く勇気が出ません。おやすみ。
    (9)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:56 PM.

  9. #19
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    A.E.1568年12月20日

    「過去視とはすごいな。成程、彼女もまた『天才』だというわけか。」
    楽しそうに話すミューヌを不安そうに見つめるキャプテンと裁判長。

    「あの、このことは彼女のためにも内密に‥‥。」
    「ははっ、分ってるよ。もともと冒険者ギルドはそんな人間が集まるところだ。秘密の無い冒険者などいないさ。」
    「はあ‥‥。」

    「しかしそうか、過去視が原因だとすると、少し調べる必要があるな。」
    「え、すぐ目覚めるんじゃないの!?」
    「彼女が使ってしまったアニマの消費量を推測しないと、目覚めの時期が予測できない。アニマ欠乏症の厄介なところはね、アニマを相当使いすぎてしまってから発病する事なんだ。」
    「使いすぎるって?」
    「アニマは借金が可能だって事。0になったら発病するとして、マイナスになってもほとんど自覚なしにドンドン使うことができる。そして寝たら最後、眠り姫になるわけだ。」
    「むう‥‥。」

    「時空に関する術は地脈に干渉することで発動するが、その際にアニマを消費する。その点ではテレポ・デジョンと過去視は同系統の術だ。テレポとアニマの関係は研究が進んでいて、今では簡易測定器で管理できるんだが、過去視は一般的じゃなくてね。僕も残念ながら過去視の専門家ではない。資料はあるけど、僕にはさっぱりだ。悪いけど君たちで調べてくれるかな?」

    そして二人はテーブルに残り、資料とノートを睨めっこしている。ノートに残った記録から、遡った時間と、回数を調べて使用アニマ量を求めるらしい。

    そんな姿をミューヌはカウンター越しに眺めていた。渡した資料は、今は行方知れずの十二跡調査会の事務所を整理した時に回収したもの。あいつらも面白い奴らだったな、元気にやっていればいいんだが、と感慨にふける。

    ステンドグラスからの光がオレンジ色に染まってきたころ、二人がカウンターに顔を出した。どうも元気が無い。

    「んん?元気ないねえ。どうだった?」
    「最悪‥‥」
    「ふーん?」
    「目覚めるまで良くて2か月、4か月を超える可能性もあります。」
    「驚いた!また盛大に借金したもんだね、彼女。」

    「あのバカ、アニマを2000以上突っ込んでんのよ。自覚症状出てたはずなのに。」
    女の子の方は少し涙目だ。

    「‥‥知らずに無理をさせた僕たちが悪い。マスターありがとうございます。もう少し調べたいので資料をお借りしてよろしいですか?」
    「ああ、どうぞ。看病の方は手配しておいたから、今後のことについては明日にするとして、今日はもう帰りなさい。何度も言うけど、時間はかかるとしても、後遺症が残るような病気じゃないから、余り深刻になりすぎないように。」

    「ありがと」「分りました。」

    二人を返した後、ミューヌは腕を組み、呟く。

    「2000超のアニマ消費に耐えられるとは、よっぽど時に愛されてるね。となると、彼女が見たものには信ぴょう性が生まれるわけか。いずれ彼らには、大きな仕事を依頼することになるかもしれないな。」

    ミューヌの表情は、優秀な冒険者の卵を見つけたときに見せる楽しげな笑みを湛えていた。
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    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:23 PM.

  10. #20
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    現実を見つめる
    A.E.1569年3月16日 肌寒い

    結局私は2回連続で誕生日をスルーしてしまったらしい。はぁ~~;;

    過去視って危ないんですね。

    そういえば突然眠くなったり、逆に妙に目が冴えたりしてたけど、あれが前兆だったのか‥‥。日記帳は何とかしたいと主張しましたが、「ダメ!」と一蹴。

    あと、冒険宿のミューヌさんから、体調が戻ったら顔だして欲しい、と伝言があったらしいです。まだ叱られるのかな、行きたくないなー。




    大人の事情
    A.E.1569年3月18日 怒りのち驚きのち、びみょう

    ミューヌさんに会ってきました。

    驚いた。新聞破いたの、この人じゃん!

    頭に血が上って詰め寄ったら、
    「まあまあ。」
    と言いながら私の日記帳まで出てきた。結局この人が悪の黒幕だったようです。

    「誰にも言わないと約束するなら事情を教えてあげる。」
    と言われたので、日記にだけ吐き出します。誰にも言ってないもん。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    リムサに帝国艦隊の救援があったのは、真実でした。ただ、同盟関係があったわけではなく、あくまで帝国の都合だった模様。エオルゼア3国の一角が完全に潰れる事を避けたかったのだと偉い大人たちは分析しているようです。

    しかし、リムサには、トライデントという、船の競技で優勝した艦隊を提督と認める、建国からのルールがあります。空の艦である帝国艦隊が出場してはならないという明確なルールがあるわけではなく、真実が広まった場合に、国民世論がトライデントの開催を要求するかもしれません。提督も行方不明です。帝国が動かない以上、真実を隠すしかない、との事でした。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「紙媒体での記録を消す要請を受けていてね。新聞についてはどうしても看過できなかった。ただ、日記を奪ったことについては謝るよ。ほとぼりが冷めれば返そうと思ってたんだが、まさかこんな無茶をするとはね。」

    呆れてものが言えません。でも自分がやったことでかけた迷惑や、助けてくれたことも事実なので、なんだか帳尻が合わない気がしますけど、日記帳も返ってきたし、引き下がることにしました。

    でもここには書く。納得なんて、できません!
    (8)
    Last edited by lucia; 02-02-2013 at 05:27 PM.

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